知的障害がある当事者たちが自ら声を伝えるインターネット放送局が、大阪にある。設立準備のさなかだった昨年7月、神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者19人が殺害された。「いきてたらあかんのか」。1年がたつのを前に、事件と向き合って番組を作った。 横浜から高速道路を使って1時間あまり。相模湖近くの山あいにあるやまゆり園を、6月末、知的障害がある永井広美さん(44)が花束を持って訪ねた。 傍らには、小型のビデオカメラを構えたスタッフ。大阪府東大阪市の社会福祉法人「創思苑(そうしえん)」が立ち上げたネット放送局「パンジーメディア」の撮影だ。東大阪から3日間の日程で、園入所者の保護者や、地元の社会福祉法人に取材し、最後に事件の現場を訪ねた。 入所者たちは施設建て替えのため転居し、電気が消された園は静まりかえっていた。「山奥の施設で暮らすより、にぎやかな地域に住むほうがしあわせだと思
30歳男性の苦悩 自分は犯罪被害者の遺族か、それとも加害者の親族か--。2010年3月に発生した宮崎市家族3人殺害事件で、母(当時50歳)と姉(同24歳)、生後5カ月のおいを殺された男性(30)が毎日新聞の取材に応じた。肉親の命を奪ったのは姉の夫だった。被害者遺族として苦境に陥りながら、周囲から「加害者の義弟」として扱われる理不尽。男性は8日、福岡市内で開かれる犯罪被害者遺族の集いで胸の内を明かす。 3人を殺害したのは奥本章寛死刑囚(29)。7年前、家庭への不満から姉のくみ子さんとおいの雄登ちゃん、同居していた母の貴子さんをあやめた。事件当時、男性は23歳。福岡で1人暮らしをしていた。父母は離婚していたため、男性は肉親を一度に失った。生きる気力がうせ、自暴自棄になった。事件の1年後、公務員を辞めて無職に。貯金も底をつき、消費者金融で借金もした。生活の困窮以上に苦しんだのが周囲の視線だった。
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