「貧困ビジネス」で生活保護費を搾取されたとして、埼玉県戸田市の業者が運営していた宿泊施設の元入居者2人が、業者側に損害賠償を求めた訴訟の判決で、さいたま地裁(脇由紀裁判長)は1日、「生活保護法の趣旨に反し、違法性が高い」として、計約1500万円を支払うよう命じた。原告側代理人によると、貧困ビジネスの実態を明らかにするのは難しく、同種の訴訟で業者側に賠償を命じた判決は珍しいという。判決は、宿泊
日雇い労働者の町から福祉の町へ フォークの神様と言われた岡林信康が名曲『山谷ブルース』で「今日の仕事はつらかった あとは焼酎をあおるだけ……」と歌い、かつて日雇い労働者の町だった山谷。浅草の北方1.5キロほどに位置する、今は台東区清川、日本堤などの住居表示のエリアで、1泊2000円前後のドヤ(簡易宿泊所)が軒を連ねている。 早朝、その日の仕事を求める男たちがあふれ、仕事を斡旋する手配師が蠢き、そして夕方には仕事から帰ってきた男たちで満ちるといった光景は、今は昔の物語。最盛期に日雇い労働者3万人がいたとされるこの町はずいぶん静かになった。 「そうさ。都庁もディズニーランドもおれがつくったさ」 と、豪語する元労働者もいるにはいるが、寄る年波に勝てず、多くは生活保護の受給者になった。近年、他の地から移り住んだ人も少なくなく、「福祉の町」と言われるようになって久しい。一方で、ドヤからゲストハウスへ
障害者の「逸失利益」認定を=両親が賠償求め提訴へ-東京地裁 亡くなった松沢和真さんの逸失利益を求める訴訟を起こす両親=10日午後、東京都中央区 障害者施設から行方不明となり、死亡した知的障害を持つ少年の損害賠償をめぐり、将来の収入に当たる「逸失利益」をゼロと算定するのは不当だとして、両親が施設側に対し、一般的な逸失利益額を含む約8800万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に14日起こす。都内で10日、取材に応じた両親は「命に値段を付けて差別する現在の仕組みはおかしい」と訴えた。 亡くなったのは、東京都八王子市の障害者施設に入所していた松沢和真さん=当時(15)=。2015年9月、無施錠の扉から外へ出て行方不明となり、同11月に高尾山麓の沢で遺体で見つかった。 施設側は安全管理上の過失を認め、慰謝料2000万円を提示したが、逸失利益はゼロと算定した。このため、両親は男性の平均賃金を基に得
近畿都市部の児童相談所(児相)での勤務経験がある丸山隆さん=仮名=は、どれほどの表面化しない虐待があるのかと思い悩む日々を送る。 数年前の秋口、ある住民が夜更けの住宅街を1人歩く幼い少女を見かけた。「こんな子供いたかな」。何げなく後をつけていくと、アパートの一室に消えた。 地元の小学校に問い合わせたが該当する子供はいない。住民は虐待を疑い、学校を通じ児相に通告。対応した丸山さんはアパートの大家に尋ねたが「子供が一緒にいるとは聞いていない」。部屋にも直接訪問したが応答は一切なかった。 連絡を取りたいと手紙を何度もドアに挟んだが、これにも反応はない。《このままでは子供を保護するとともに罰金が科せられる》。この文句を添えると、ようやく連絡があった。 「子供は大丈夫だ」。両親は訴えるが、室内はゴミが散乱し、床にはゴキブリがはっていた。少女も薄汚れており、明らかなネグレクト(育児放棄)だ。聞けばギャ
わきにある刺し傷を見ると、よく生き残って来られたものだと、大阪市内の上原よう子さん(34)は、今でも思う。 実父の虐待は生後まもなく始まった。3歳のとき、母の手伝いをし、お盆に載せたおかずを食卓に運ぶ際に転んでしまった。逆上した父が手にしたのは、果物ナイフだった。 それが、わきの傷だ。愛想を尽かした母は、離婚して2つ上の兄とともに家を飛び出してくれたが、平穏は長くは続かない。母が再婚した相手も、また、子供に暴力をふるう人だった。 職に就かず、昼間から酒を飲み、パチンコに負けては兄や私に手をあげた。中学にあがる頃には、学校に行かせてもらえず、監禁状態になった。風呂に何度も沈められ、鉄パイプで頭を殴られることもあった。 「憂さを晴らしていたのだろう」。そう思う。風呂嫌いになり、年中、肩にふけをためていた。たばこの火を体に押し当てられ、背中にも無数の傷がある。兄は腕がケロイド状になり真夏も長袖が
大阪市内に住む40代の今井陽子さん=仮名=は一枚の手紙を見ると今でも胸が締め付けられる。高校1年になる長女(16)が小学4年のときに書いた手紙だ。 「ママへ」で始まる、その手紙には、手袋を紛失したことをわびる内容がびっしりと記されている。当時、今井さんは、娘に虐待を加えて何かの度に激しく叱責していた。 手をあげる際、娘はビクッとするしぐさを見せ、背を向けることがあったが、止めることはできず、その小さな背中を蹴り上げることもあったという。 《バカなのでうまれてこないほうがよかったのかなぁって思っています》 ここまで娘を追い詰めていたのだと思うと心が痛む。 だが、この手紙をもらった後も、娘への虐待はなかなか止めることはできなかった。新聞で目にした子育てサロンに参加し、すべてを打ち明けることで、心の荷が下り、以降は一切手を出していないが、虐待は小学5年の終わりまで続いた。 大阪では、堺の3歳児遺
新法について児童養護施設、更生保護施設など関係者と議論した(9月8日、救世軍本営・山室軍平記念ホール) 売春防止法に基づく婦人保護事業に新法を求める動きが活発になってきた。全国婦人保護施設等連絡協議会(全婦連、横田千代子会長)は今春、「女性自立支援法(仮称)」の骨子をまとめた。女性ゆえの生きにくさを抱えた人に敷居の高い現行制度を改め、早く支援につなげて生き直しを支えることが狙いだ。1956年5月の売春防止法公布から今年でちょうど60年。全婦連は今後、新法の必要性を説明するキャラバンを組み、各地をまわる予定だ。 新法の検討は2015年7月から全婦連プロジェクトチームが進め、今年4月に骨子をまとめた。売春した女性を「要保護女子」という保護の客体ではなく権利の主体とすることが柱。自立に向けて切れ目なく支援できる体制を目指す。 売春防止法第4章「保護更生」に位置付けられた婦人保護事業には、「収容」
内部告発の元施設職員反訴=「障害者虐待」通報し訴訟に-鹿児島 施設内の障害者への虐待を内部告発したところ、施設運営会社から損害賠償を求める訴訟を起こされ精神的苦痛を受けたとして、元職員の40代男性が9日、運営会社などを相手取り約250万円の損害賠償を求める訴訟を鹿児島地裁に起こした。 訴状などによると、男性は2015年2月、勤務していた鹿児島市の施設内で「利用者が虐待されている可能性がある」と聞き、運営会社の代表者に報告、障害者虐待防止法に基づき市に通報した。これに対し、運営会社は同年6月、内部告発には触れずに、男性が「虐待がある」と施設内で言いふらしたり代表者に虚偽報告をしたりしたとして鹿児島簡裁に提訴した。男性は提訴前の同年2月に施設を自主退職した。 男性側は、施設のサービス管理責任者だったため、虐待を受けたと思われる障害者を発見した場合は通報義務があったと主張。運営会社の提訴は「
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貧困や虐待などで実の親が育てられない子どもを社会で育てる仕組みの一つとして注目される「特別養子縁組」。適切なあっせん(仲介)や当事者へのていねいな支援が求められるが、児童相談所と民間事業者それぞれに課題を抱え、環境整備が急がれる。 民法が改正されて、特別養子縁組が盛り込まれたのは1987年。宮城県の医師が73年、戸籍に出産記録が残るのを恐れる親が人工中絶するのを防ぐため、育てたい夫婦が実親であるように出生届を偽造していたことを自ら公表し、法整備を求めたのが発端だ。 それまでは、実親との法的関係が残る制度(普通養子縁組)しかなかった。特別養子縁組は、実親との法的な親子関係はなくなる。 日本の養子縁組制度はもともと家制度継承の手段という認識が強く、児童福祉の観点が薄かったため、民法が改正されても、専門機関やあっせん法は創設されてこなかった。 貧困や虐待などで保護を必要とする子どもは約4万6千人
京都市左京区の知的障害者支援施設「わかば」で7月、個室のドアノブを取り外し、内側から開閉できない閉じ込め状態にしていた「虐待」が発覚した問題で、同市は4日、新たに4人の入所者が不当な身体拘束を受けていたことが判明したと発表した。市は同日、同施設に障害者総合支援法などに基づき「改善勧告」を行った。 同施設では、男女4人の個室で、食事や入浴時を除いて部屋から出られない状態にしていたり、夜間などにドアノブを取り外したりしていたことが今年7月に判明。同市が引き続き、特別監査を進めていた。 市がまとめた特別監査の調査報告書によると、同施設は平成26年9月〜昨年10月、入所者の検便を実施する際、居室外のトイレを使用しないようにするため、20〜30代の男女4人の居室のドアノブを1〜2晩の間取り外し、ポータブルトイレでの排便を強いていた。 市では、拘束が短期間だが、「切迫性」「非代替性」の要件を満たしてい
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