隠されてきた「秘密」 祖父についての話をはじめて聞いたのがいつのことだったかは覚えていない。 けれど、緑の表紙に白い線が斜めに入った小さな本のことはよく覚えている。その本は、私の家の居間に置いてあった黒いキャビネットに保管されていた。キャビネットにはいつも鍵がかけられていて、その中に入っている物はみな謎に包まれていた。きっと見てはいけない大切な物が入っているに違いない、そう私は考えていた。 父方の祖父母とは子供の頃に交流があった。しかし母方の祖父母については、私たちはほとんど何も知らなかった。二人とも、私が生まれる前に亡くなっていた。 子供の私の目には、写真に写る祖父母は「昔の人々」と聞いて想像する通りの人たちのように映った。違う世界、違う時代の人々だ。祖母が看護師だったこと、祖父が薬剤師だったこと、そして彼らがドイツのブレーメン近郊で老人ホームを経営していたことは知っていたが、私たちは彼
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