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  • 「民から官へ」の逆転が始まった - 池田信夫 blog

    きのうの日郵政の社長人事について、鳩山首相はこうコメントしている。日銀の総裁人事で、(元大蔵次官の)武藤(敏郎)さんに対して、われわれはノーと申し上げた経緯はあります。それは事実です。ただ、それは、やっぱり日銀のいわゆる財務省からの独立性というような問題が一番大きくて、それによって、ノーだということを申し上げたのも、皆さん方も事実として、ご理解されていることだと思います で、今回、斎藤次郎さん、私も昨日の夜にですね、亀井大臣からその話をいただいたときには、驚きながら、なかなかこれは相当な強者の方だから、おもしろいかなというふうには思いました。そのときに、斎藤次郎さんの場合は、もう既に、大蔵省を辞めて14年たたれてますから・・・この発言は、鳩山氏が郵政民営化問題をまったく理解していないことを示している。「日銀の独立性」がなぜ必要なのか、彼はわかっているのだろうか。教科書的にいえば、中央銀

  • 保育バウチャーで待機児童をなくせ - 池田信夫 blog

    鈴木亘氏が、80万人に及ぶといわれる待機児童の問題を「フォーサイト」で論じている。大竹文雄氏の要約を借りると、その論旨は保育所の数を増やすことは保育所間の競争を激化させ収益の悪化要因になるので、認可保育所にとっては、参入を少なくして待機児童が多い状態にしておく方が望ましい。そのため、既得権をもった保育所業界は、族議員と厚生労働省を使って、保育所の参入規制の緩和を骨抜きにしてきたという。この問題の解消方法として、鈴木氏は「子ども手当」を保育・教育バウチャーにして、無認可保育所にも切符の受け取りを許...

  • ソニーよ”普通の会社”にまで堕ちてどうする! - 池田信夫 blog

    ソニーの元幹部が書いたとされる怪文書がネット上を回遊して、話題になっている。私のところにも全文が手に入った。これは「M元副社長がK誌に書いた原稿を広報が止めた」ということになっているが、ソニーの広報はその事実を否定している。真偽のほどは定かではないが、内容は怪文書とは思えないしっかりしたものなので、一部を引用しておこう。かつてないほどの業績悪化から立ち直るためにストリンガー会長兼社長に権限を集中して迅速な経営が可能な体制とした。 ソニーはこういっているのですが、かつて同社に在職してウォークマン始め各種製品の開発に関わり、さらには副社長まで務めさせてもらった私としては納得がいかないことばかりなのです。 まず最初の疑問は、なんといっても「なぜストリンガー会長・社長なのか?」です。 日の企業だから外人トップは不要だといった偏狭な発想ではありません。 ストリンガー氏は、米国の放送局CBSに30

  • 新左翼とロスジェネ - 池田信夫 blog

    私のが意外に若者に読まれている背景には、書も指摘するように、いつの時代にも青春に特有の不安や「自分探し」があるのではないか。世間でいうほど絶対的貧困状態に置かれた若者は多くない(フリーターは被扶養者であることが多い)。かつての新左翼も政治運動としてはナンセンスで、全共闘はマルクス主義というよりアナーキズムに近かった。60年安保も、学生のエリート意識による「集団的なストレス発散」だった。 こういう若者の不安をい物にする連中はいつの時代にもいるもので、著者が企画した対談で『蟹工船』ブームを起こした雨宮処凜やモリタクなどの「貧困ビジネス」は、ちょっとした成長産業だ。しかしかつての新左翼や原理などと同様、こういうカルトは何も解決しない。ただ新左翼は日の高度成長の最中にそれを批判する見当違いのお遊びにすぎなかったが、いまロスジェネの直面しているのは日社会の物の病だ。 ところが雨宮・モ

  • 経済学は役に立つ - 池田信夫 blog

    ・・・とMaskinが主張している。池尾・池田でも紹介したように、今回の金融危機は投資銀行で起きた「取り付け」であり、Diamond-Dibvigの有名な論文で説明でき、自己資規制の意味はDewatripont-Tiroleで・・・というように、たいていの現象は事後的には説明できる。困るのは、いつバブルが崩壊するのかを事前に予測する理論がないことだが、経済のようにきわめて複雑な非線形システムのふるまいを予測するのは、自然科学でも無理だ。たとえば東海地震がどれぐらいの規模になるかは予測できても、いつ起こるかは予測できない。 私も最近、経営学のをいろいろ読んでみて、経済学って大したもんだなと、あらためて感心した。経営学の教科書はケース・メソッドといえば聞こえはいいが、要するに成功した会社の自慢話を並べているだけで、理論がないのだ。うまく行った会社だけをいくら分析しても、成功の理由はわか

  • 概算要求でよみがえる「美濃部都政」の悪夢 - 池田信夫 blog

    きのう締め切られた概算要求は、なぜか夜になっても総額が発表されず、私のニューズウィークのコラムも1日遅れてしまった。概算要求の発表が翌日にずれこむなんて前代未聞だ。 その原因は、私の想像どおり総額が「90兆円台前半」ではなかったからだ。きのうまでに発表された各省の予算を合計すると70兆800億円。それにきょう出た財務省と法務省の要求24兆9600億円を合計すると、95兆円を超える。財務省の発表が最後まで遅れたのは、予備費などの「隠し財源」を削って95兆円以内に収めるためだったと思われるが、それでも「前半」にはできなかった。 鳩山首相は、財政悪化を懸念して「マニフェストの一部断念」を示唆した。もともと両立不可能な「バラマキ福祉」と「無駄の削減」という二兎を追った結果、その矛盾が露呈したのだから、どちらかを断念するしかない。政府債務が900兆円を超え、財政の破綻確率が94.58%と推定され

  • オーナー企業の時代 - 池田信夫 blog

    Businessweekの選ぶ世界の優良企業40社の第1位に、グーグルやアップルを押えて任天堂が選ばれた。ユニクロは過去最高益を更新し、世界展開をめざしている。この4つの企業に共通しているのは、所有と経営の分離していないオーナー企業だということだ。 所有と経営の分離はバーリ=ミーンズによって資主義の新しい形態とされ、バーナムは経営者資主義によって企業は計画経済の長所を取り入れることができると主張した。しかし所有と経営が分離すると、Jensen-Mecklingが指摘したエイジェンシー問題が発生する。これを克服するために欧米では資の所有権と命令でコントロールする垂直統合型の巨大企業が発達したが、これは命令される従業員のインセンティブを弱める。それを監視する階層構造が多重化する・・・という悪循環によって「大企業病」に陥る企業が増え、欧米型の垂直統合企業は1970年代以降、没落した。

  • 森永卓郎という電波芸者 - 池田信夫 blog

    城繁幸氏のブログ経由で、日経BPの森永卓郎氏のコラムを読んで、コーヒーを吹いた。彼はこう書く:はたして、デンマークのフレクシキュリティは、当に日のモデルとして適当なのだろうか。実は、同じ西欧の国でも、デンマークとは正反対の労働政策を進めている国がある。それは、デンマークとはドイツをはさんだお隣にある国、オランダである。オランダは、デンマークとは異なって解雇に対する規制が極めて厳しい。当ブログでも書いたように、欧州委員会がフレクシキュリティのモデルとしているのはデンマークとオランダである。くわ...

  • オリンピックという幻想 - 池田信夫 blog

    東京が、めでたくオリンピックに落選した。グーグルで「東京オリンピック反対」で検索すると68万件もあり、私のブログ記事が2番目に出てくるが、「東京オリンピック賛成」は28万件だ。「熱意がない」というIOCの判断は的確である。それを無視して、150億円の都税と800人の都職員をくだらないお祭り騒ぎに動員した石原知事は、新銀行東京の後始末をして引退してはどうか。 そもそもオリンピックを国際的行事として崇拝しているのは日人だけで、IOCなんて国際機関でも公的組織でもない、私的なスポーツ団体にすぎない。かつてはIOC委員に公然と賄賂を贈るのは当たり前だった。IOCはテレビ中継などに巨額の料金を取る商業団体であり、商業化を推進したサマランチ前会長は、フランコ独裁政権のスポーツ長官で、いかがわしい噂も多かった。今回も問題外と見られていたマドリッドが第1回投票で1位になったのは、サマランチ氏の影響とい

  • バブルはなぜ繰り返されるのか - 池田信夫 blog

    書は、昨年のディスカッションペーパー(Reinhart-Rogoff)をさらに800年にわたるデータで拡張したもので、いわばキンドルバーガーの有名なの数量経済史版という感じだ。金融関係者には必携の包括的なデータベースだが、一般向きではない(ビジネスマンには上の論文で十分だろう)。 書の問題提起は、なぜバブルはこうも繰り返されるのかということだ。結論はタイトルにもあらわれているように、人々が歴史に学ばず、「今回は相場が上がり続ける」と信じることだ。日のバブルのときも、「ストック経済」というキャッチフレーズで「パラダイム転換」を説いた経済学者がいた。ITバブルのときは、Businessweekが「ニューエコノミー」という言葉をはやらせた。サブプライムのときは「金融工学ですべてのリスクはヘッジできる」という神話が過剰投資をもたらした。 したがって著者は、こうしたバブルから「卒業」でき

  • 経済成長というゲームの終わり - 池田信夫 blog

    今週のニューズウィークにも書いたが、JALの年金債務は、日の他の企業にも通じる深刻な問題だ。日経新聞の今年3月の集計によれば、主要上場企業の年金・退職金の積立不足は総額約13兆円と、前年比で倍増した。この最大の原因は、株安によって年金原資が大幅に減ったためだ。上位10社は次のとおり:日立製作所:6866億円 NTT:5763億円 東芝:5446億円 ホンダ:4566億円 パナソニック:4188億円 三菱電機:4039億円 富士通:4001億円 トヨタ自動車:3929億円 NEC:3483億円 日航空:3314億円どの企業でも、積立不足の額は積立額に近いか上回っており、年金積立のほぼ半分が不足している。こうした年金債務は現在の会計基準では計上しなくてもよいので「簿外債務」になっているが、今度のJALのように企業が破綻するリスクが出てくると現実の債務となる。国際会計基準が

  • 鳩山由紀夫氏のモラトリアム宣言 - 池田信夫 blog

    コメントで教えてもらったが、これは驚いた。総選挙で鳩山由紀夫氏は「返済猶予法案は川内博史氏のアイディアだが、私も応援する」と明言した。これでは亀井氏もいうように、彼を更迭するのは不可能だろう。亀井氏の抱き合い心中で、さっそく内閣総辞職か。

  • 亀井静香氏を更迭する方法 - 池田信夫 blog

    鳩山首相と小沢幹事長が日にいない間に、亀井郵政・金融担当相の暴走はエスカレートし、テレビ番組で「モラトリアムに反対なら私を更迭してみろ」と首相に挑戦状をたたきつけた。民主党が参議院で単独過半数に満たないことから強気に出ているものと思われるが、彼を更迭することは可能だ。 首相が臨時国会を10月25日の参議院補欠選挙のあとに設定したのは意味深長だ。参議院の定数242のうち、今は民主党系113、国民新党5、社民党5の連立で過半数(122)を1議席上回っているが、補選で民主党が2議席とも取り、無所属...

  • 検索にもブロック機能をつけては? - 池田信夫 blog

    ツイッターのブロック機能を使うとノイズが減って便利なので、検索でもそれと同じ機能をつけてはどうだろうか。たとえばグーグルで私の名前を検索するとき、池田信夫 -site:hatena.ne.jp -site:cocolog-nifty.com というオプションをつけるだけで、ノイズがかなり減る(ユーザー名でも除外できる)。ところが、こういうオプションを保存する機能がグーグルにもヤフーにもない。もちろんオプションをつけた検索結果のURLをブックマークに登録すればいいのだが、いちいち登録するのは面倒だ...

  • 支離滅裂な「鳩山イニシアティブ」 - 池田信夫 blog

    鳩山首相がCO2を25%削減する「鳩山イニシアティブ」を高らかに宣言し、世界各国がそれを賞賛するのをみて、経済学者ってどこの国でも無視されてるんだなと思った。Mankiw blogの読者ならご存じのように、世界の主要な経済学者は、排出権取引よりも環境税のようなピグー税のほうが効率的で公正だと主張しているのだが、政治家にはまったく理解されない。それどころか、この二つが代替的な政策手段だということさえ認識してない人が多い。民主党のマニフェストに至っては、キャップ&トレード方式による実効ある国内排出量取引市場を創設する。 地球温暖化対策税の導入を検討する。と併記する支離滅裂なものだ。この両方を同時に実施することは不可能である。たとえば、あるCO2排出企業が、その排出権を中国から買って排出量をまったく削減しなかったら、どうするのだろうか。その企業に環境税を課税したら二重負担になるから、企業は購入し

  • 花岡信昭氏の「絶滅危惧種的メディア論」 - 池田信夫 blog

    産経新聞の元政治部長だった花岡信昭氏が、日経BPで「記者クラブ制度批判は完全な誤りだ」と主張している。昨今の記者クラブ開放に反対する勇気ある発言、といいたいところだが、その論理があまりにもお粗末で泣けてくる。彼はこう宣言する:日の記者クラブは閉鎖的だという主張は完璧な間違いである。アメリカのホワイトハウスで記者証を取得しようとすると、徹底的に身辺調査が行われ、書いてきた記事を検証され、指紋まで取られる。そのため記者証取得には何カ月もかかる。[・・・]内閣記者会には、日新聞協会加盟の新聞社、通信社、放送会社に所属してさえすれば、簡単に入会できる。これは「閉鎖性」とは何の関係もなく、アメリカセキュリティ・チェックがしっかりしていて、日はいい加減だということである。私がNHKに勤務していたころは、記者証を政治部の記者に借りて首相官邸の中まで入ったこともある。記者証さえあれば武器のチェック

  • 「日本版FCC」は何のためにつくるのか - 池田信夫 blog

    朝日新聞によれば、政府が「日版FCC」をつくることを決めたそうだ。これは民主党が昔から提唱している政策で、私も5年ほど前に議員立法の原案を見せられたことがある。そのとき「何のためにやるんですか?」と質問したら、提案者は「欧米ではみんなやっているから」としか答えられなかった。 7月の情報通信政策フォーラムでも、会場から「規制部門を分離したら具体的にどういうメリットがあるのか?」と質問されて、内藤正光氏(現副大臣)は「政府を批判する放送局を政府が規制するのはおかしい」と言っていたが、彼はFCCが政府機関ではないとでも思っているのだろうか。FCCは職員2000人以上の堂々たる政府機関であり、メディア局にはすべての放送を監視する職員がいて、不適切な放送には最高数十万ドルの罰金を科す。 そもそも特定の番組が適切かどうかを政府機関が審査する必要があるのだろうか。この点については、総務省べったりの

  • フランス革命は正しかったのか - 池田信夫 blog

    総選挙では民主党が「革命的な変化」を強調したのに対して、自民党は保守主義の立場から「継続的変化」を主張した。これは昔から続いている論争で、歴史の教科書ではフランス革命は近代社会を生み出した偉大な出来事とされているが、バークからハイエクに至る保守主義にとっては、それは理性や人権の名のもとに大量殺戮を行ない、ロシア革命に至る「計画主義」の端緒となった大規模テロリズムだということになっている。 経済学者のほとんどは後者の立場だが、Acemoglu et al.はこの通説に挑戦し、数量経済史的な手法でバークが誤っていたと主張する。彼らは当時の人口データを使って、図のようにフランス革命とナポレオン戦争によって占領された地域で都市化(人口の都市集中)が進み、成長率が上がったことを示している。補完的な制度は「ビッグバン」によって一挙に変えないとだめなのだ、と彼らは主張する。フランス革命はすべてを破壊し

  • 景気対策で「身分格差」は直らない - 池田信夫 blog

    井出草平の研究ノートという社会学者のブログに、「ロストジェネレーションは計量的に支持されない」という記事があった。ここで彼が批判しているのは、現在の雇用問題の原因を単なる不況による「就職氷河期」の問題とみる説だ。大卒の求人倍率だけをみると、90年代には1を割ることもあった大卒求人倍率が、2006年には2を超えている。これだけみると「景気さえよくなれば雇用問題は解決する。構造改革なんてナンセンス」という、今は亡きリフレ派の議論が当たっているようにみえる。ところが、非正社員の比率を年齢別に分析すると、次のようになっている: これを受けて井出氏はこう結論する:若年者の正規雇用率が高まっていくのは、1980年くらいから始まる長期トレンドであるが、景気回復によって、この傾向が変化したことはない。変化したのは、大卒ホワイトカラーという恵まれた立場の人間たちの就職率(正規雇用率)が高まった程度である。

  • つきはぎだらけの脳と心 - 池田信夫 blog

    脳が驚異的に複雑で巧妙にできていることは誰でも知っているが、それは脳の性能が高いことを必ずしも意味しない。むしろ脳は進化の過程で行き当たりばったりに複雑化し、古い脳の上に新しい脳がつぎ足されているため、機能が重複して効率が悪いというのが書のテーマだ。進化の初期の段階でつくられたまま、ほとんど使われていない古い機能も常に「オン」になっているので、わずか1.3kgの器官を維持するために人間の摂取するエネルギーの2割が使われている。素子(ニューロン)の性能は半導体の数万分の一以下しかなく、処理速度も正確さもはるかに劣る。 その代わり脳は、100億のニューロンと500兆のシナプスからなる恐るべき超並列コンピュータで、この並列処理によって素子の低性能を補っている。たとえば眼球の機能は不完全なので、情報の入力は不安定だ。次の図はサッカード(視点運動)とよばれる現象の実験で、左側の写真を4分間見ると