オリンピックのエンブレムとベルギーの劇場のロゴは、「庶民感覚で見れば同じ」というような反論がよく聞かれる。佐野研二郎氏が説明したように、そもそものコンセプトが違うことを理解した上で、僕自身はその指摘は、「そう見えてもしかたがないよな」と思う。「デザインのわかっている人にはわかる」というような「スノッブ」な態度に、「デザインのわからない庶民には同じなんだよ!」と反発する気持ちはわかるし、その気持を理解することが大切だと思う。知性的な物言いに対して反発する、こうした反知性主義は、インターネット時代には避けて通れない。 しかし一方で、(僕自身、知性主義者として)反知性主義一辺倒でいいのかとも思う。アートディレクターの仕事も知らないのに「盗用」というとき、僕はそこに反知性主義の不誠実な態度を見て取る。理解しようともしないのは、理解したら自分の主張の根拠である「庶民感覚」が崩れてしまうからである。反