1.はじめに 新しい「学習指導要領」には,「野外観察については,学校内外の地層を観察する活動とすること」,「地層とその中の化石を手掛かりとして過去の環境と地質年代を推定すること」(文科省,2009)と記されている。「学習指導要領解説」にも,「野外観察に当たっては,事前,事後の指導も含めて年間指導計画の中に位置付け,計画的に実施すること」(文科省,2009)と記され,野外観察の重視が打ち出された。 しかし,野外観察の授業で化石を見つけることは容易ではない。そこで,砂岩や泥岩の地層に多く見られる「生痕化石」を教材化して,教師の共有財産にしたいと考えた。「生痕化石」はアンモナイトや恐竜の化石のように一般的ではないが,ひと手間かけることで学習者が「ただの地層」や「ただの石」としか思っていないものに「命の鼓動」を感じさせることができ,地層観察における「有効な手だて」となる可能性があるので報告する。