神奈川県警宮前署の刑事課は、階段を上った3階にある。 2022年秋、出頭要請を受けた20代の男性は刑事課の取調室に入った。格子のついた窓があり、机を挟み二つの椅子が置かれている。「刑事ドラマに出てくるような部屋だなと思いました」 最初に刑事からこう説明があった。 「占有離脱物横領容疑で調べています。サカイ引越センターの件です」 東証プライム上場の引っ越し大手であるサカイ(堺市)では、顧客406人分の個人情報の流出が明らかになっていた。 これを明るみに出したのが社員らの行動だった。サカイの社員だった男性もそれに関わったうちの一人。あれは公益通報であり、やましいことをしたつもりは一切ない――。 ところが刑事の説明によれば、男性の行動の一部に違法の疑いがあるという。正義のためにやったつもりだが、いつの間にか警察の捜査対象となり、「容疑者」の立場に置かれていた。 刑事は穏やかな表情ながら、細かいと

