タグ

ブックマーク / blog.kazuhooku.com (12)

  • QUICむけにAES-GCM実装を最適化した話 (1/2)

    4月末に、会社のほうで「Can QUIC match TCP’s computational efficiency?」というブログエントリを書きました。我々が開発中のQUIC実装であるquiclyのチューニングを通して、QUICのCPU負荷はTLS over TCP並に低減可能であろうと推論した記事です。この記事を書く際には、Stay Homeという状況の中で、手元にあった安いハードウェアを使ったのですが、その後、10gbe NICを入手し、ハードウェアによるUDP GSOオフロード環境でのパフォーマンスを確認していくと、OpenSSLのAES-GCM実装がボトルネックになることがわかってきました。 TCP上で通信するTLSでは、一般に、データを16KB単位でAEADブロックに分割して、AES-GCMを用いてAEAD暗号化します注。一方、UDPを用いるQUICでは、パケット毎にAES-GC

    send
    send 2020/06/15
  • HTTP のプライオリティが大きく変わろうとしている話(その他 IETF 105 雑感)

    先週、モントリオールで開催された IETF 105 に参加してきました。 いろんなことがあったのですが、個人的に一番大きかったのは、HTTP/3 からプライオリティ(優先度制御)まわりの仕様を落とすことが決定したこと。 HTTP/3 は、トランスポートプロトコルである QUIC の上で動作する、次世代の HTTP プロトコルです。その設計は、QUIC ワーキングググループが、HTTP ワーキンググループから委託され、HTTP/2 の機能を移植する、という形式を取っています。 ところが、5月にロンドンで開催された QUIC ワーキンググループの中間会議で、一部参加者から HTTP/3 の優先度制御に対する不満が表明されたのです注1。それを受けて、QUIC ワーキンググループでは、HTTP/3 の優先度制御にあった HTTP/2 のそれとの差異を少なくする作業を進める一方、HTTP ワーキング

    send
    send 2019/07/30
  • TLS の SNI 暗号化に関する Internet Draft を共同提出しました

    Eric Rescorla (RTFM), Nick Sullivan (Cloudflare), Christopher Wood (Apple) の各氏とともに、SNI を暗号化する TLS 拡張を提案する Internet Draft を提出しました。 Encrypted Server Name Indication for TLS 1.3 アナウンスのメールにあるとおり、すでに NSS / Firefox と picotls / H2O で実装作業が開始されており、今月開催される IETF 102 で相互運用試験を行うとともに、標準化にむけた議論を深める予定です。 スノーデン事件以降、広範囲におよぶトラフィックモニタリングによるプライバシー侵害の懸念が明らかになるとともに、できるだけ多くのインターネット上の通信プロトコルを暗号化することが求められるようになってきました (参考: R

    send
    send 2018/07/03
  • QUICハンドシェイクの再設計、もしくはTLSレイヤの終焉

    先週スウェーデンのKistaで開催された第5回QUIC Interimで、ハンドシェイクプロトコルの再設計案の採用が決まりました。 提案者として、その背景にある考え方を整理したいと思います。 ▪️提案内容 詳しくはDesign Docを見てもらえばいいとして、ざっくりいうと、TLSスタックをふたつに分割し パケットはQUICがレイアウトしたバイト列をTLSスタックが提供するAPIを使って暗号化注1して生成 ハンドシェイクメッセージについては、平文のメッセージをTLSスタックとQUICスタックとの間で交換し、QUICスタック側で上記手法によるパケット化暗号化を行う というものです。 これにより、たとえばサーバがハンドシェイク時に送出するパケットの構造は以下のようにかわります。 図1. 従来方式 図2. 新方式 赤は難読化(つまり正当なパケットと攻撃との区別がつかない)、黄は未認証の暗号化(通

    QUICハンドシェイクの再設計、もしくはTLSレイヤの終焉
    send
    send 2018/06/12
  • Kazuho's Weblog: 海賊版サイトのブロッキングについてアンケートをとってみたら興味深い結果が出た

    政府がISPに対し対し海賊版サイトのブロッキングを要請し、議論になっています。あなたは以下のどの対策が正しいと思いますか? — Kazuho Oku (@kazuho) April 25, 2018 832票もの回答をいただきました。ありがとうございます。結果をみて、いくつか感想を述べさせていただきたいと思います。 ▪️海賊版サイトに対し、なんらかの新たな対策が必要かどうかについて 83%の方々が、なんらかの新しい対策を取ることに積極的賛成、あるいは消極的賛成という立場を取られていることがわかりました。一方で、17%の方々が、少なくとも現時点では新たな対策は不要であり、出版社等の権利者は現行法に基づき、刑事告発、民事訴訟、DMCA Takedownなどの手法を用いて戦うべきだと考えていらっしゃることもわかりました。 ▪️ブロッキングという手法について 意見が綺麗に割れました。 42%の方々

    send
    send 2018/04/26
  • Fastly に入社しました

    Summary in English: Joined Fastly, will continue my work on H2O there as an open-source developer. 2017年1月1日付で、Fastly 社へ転職したので報告いたします。 過去5年間、DeNA では R&D 的な立場から、様々な基盤的ソフトウェア(オープンソースになったものもありますし、クローズドなものもあります)の開発に携わってきました。 最近2年間は、同社のゲーム用サーバに端を発するオープンソースの HTTP/2 サーバ「H2O」の開発に従事してきましたが、その実装品質が高く評価され、世界有数のコンテンツ配信ネットワーク(CDN)である Fastly で採用された他、大規模なウェブサービス事業者で採用にむけた動きが進むなどの成果が出つつあります。 また、H2O における実装経験をもとに、H

    send
    send 2017/01/12
  • ソート済の整数列を圧縮する件

    圧縮されたソート済の整数列ってのは汎用的なデータ構造で、たとえば検索エンジンの転置インデックスとか、いろんなところで使うわけです。で、検索エンジンの場合は速度重要なので、PForDeltaとか様々なデータ構造が研究されてる。 一方、H2O には、ブラウザキャッシュに載ってない js や css をサーバプッシュする仕組み「cache-aware server push」があって、何がキャッシュされているか判定するためにブルームフィルタを全ての HTTP リクエストに含める必要がある。 で、ブルームフィルタを圧縮しようと思うと、ブルームフィルタってのはソート済の整数列として表現できるので、これを圧縮しようって話になる。 検索エンジン等で使う場合は速度重要だけど、HTTPリクエストに載せる場合は空間効率のほうが重要になる。ってことで、空間効率が理論限界に近いゴロム符号(の特殊系であるライス符号

    send
    send 2015/11/06
  • jailing - chroot jailを構築・運用するためのスクリプトを書いた

    個人サーバで外部に公開するサービスを動かすときには、chrootを使うにこしたことはないわけです。サービス毎にchrootしてあれば、サーバソフトウェアにセキュリティホールがあっても、他の情報が漏洩したりする可能性をぐっとおさえることができるわけですから。 でも、そのためだけにVPSdockerとかコンテナを入れて使うってのは、構築も運用もめんどくさいし、ディスク容量うし、やりたくない。systemd-nspawnも割と重たい雰囲気だし、LTSなubuntuだとそもそもsystemd入ってないし… 俺たちがほしいのは、ホストの環境の一部のみにアクセスできる、手軽なjailだー! ってわけで、ざっくり書いたのが、jailing。 /usr/bin等、OS由来のディレクトリをchroot環境にread-onlyでエクスポートしつつ、指定されたコマンドを、そのchroot環境で動かすスクリプ

    send
    send 2015/05/14
  • なぜHTTPSはHTTPより速いのか

    先週、httpvshttps.com というウェブサイトが公開されました。このウェブサイトでは、HTTP と HTTPS を用いてアクセスした場合のウェブページのダウンロード完了までにかかる時間の比較ができるのですが、多くの環境で HTTPS の方が HTTP よりも高速なことに驚きの声が上がっていました。 HTTP が TCP 上で平文を送受信するのに対し、HTTPS は TCP 上で TLS (SSL) という暗号化技術を用いて通信を行います。ならば、TLS のオーバーヘッドのぶん HTTPS のほうが遅いはずだ、という予測に反する結果になったのですから、驚くのも無理はありません。 実は、この結果にはからくりがありました。 Google Chrome、Mozilla Firefox、最近のSafari注1は、Google が開発した通信プロトコル「SPDY」に対応しており、HTTPS

    なぜHTTPSはHTTPより速いのか
    send
    send 2014/12/08
  • sprintf を最大10倍以上高速化するプリプロセッサ「qrintf」を作った

    最近H2OというHTTPサーバを書いているのですが、プロファイルを取ってみるとsprintfが結構な時間をっていて不満に感じていました。実際、sprintfは数値や文字列をフォーマットするのに十徳ナイフ的に便利なので、HTTPサーバに限らず良く使われる(そしてCPU時間を消費しがちな)関数です。 では、sprintfを最適化すれば、様々なプログラムが より高速に動作するようになるのではないでしょうか。ということで作ったのが、qrintfです。 qrintfは、Cプリプロセッサのラッパーとしてソースコードに含まれるsprintfの呼出フォーマットを解析し、フォーマットにあわせたコードに書き換えることで、sprintfを高速化します。 たとえば、以下のようなIPv4アドレスを文字列化するコード片を sprintf( buf, "%d.%d.%d.%d", (addr >> 24) & 0xf

    send
    send 2014/10/06
  • Unix系OSの権限分離の変遷について(もしくはなぜ、アプリ単位の権限分離が求められるようになったか)

    Unix系OSの権限分離の変遷について(もしくはなぜ、アプリ単位の権限分離が求められるようになったか) [ブコメした件について。大筋でおかしなことは書いてないと思いますが、出典は確認していません] Unix系OSにおける権限分離は、伝統的に、利用者ごとに異なるuser idを割り振り、これを用いてアクセス制御を行うという方式で実現されてきた。また、デーモンプロセスについては、不要な権限付与を避け、デーモンプロセス間の相互作用を抑制するために、デーモンごとに専用の「user id」を発番するのが一般的な慣習とされるようになったという経緯がある。 しかし、2000年代に入ると、インターネットの普及とあいまって、クライアントサイドではこのような「利用者ごと」の権限分離では不十分という考え方がされるようになってきた。具体的には、 (オンラインバンクのパスワードに代表されるような)攻撃価値が高い情報

    send
    send 2014/06/05
  • もうひとつの知られざるオープンソース 〜 ウェブ企業のOSS戦略

    「オープンソースソフトウェア(OSS)」と聞いて、あなたがイメージするものはなんですか? 多くの人は Linux や Apache、Firefox といった成功した大規模なソフトウェア製品を思い浮かべることでしょう。 実は、ウェブ上でサービスを提供する会社のエンジニアたちは、これらとは別の種類のOSSを使って仕事をしています。このブログエントリでは、そのようなOSSを紹介し、それらがなぜ開発され使われているかを説明したいと思います。 ■ウェブ企業におけるOSS開発の実例と合理性 下の図は、Perl で記述される大規模ウェブアプリケーションの一般的な構成を示しています注1。このうち、「自社ロジック」と書かれているところ以外は、全てオープンソースとして開発/公開されているモジュール(ソフトウェア部品)です。各社のエンジニアが密接に協力しながら、ミドルウェアをオープンソースとして整備していること

    もうひとつの知られざるオープンソース 〜 ウェブ企業のOSS戦略
    send
    send 2013/11/15
  • 1