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ブックマーク / agora-web.jp (73)

  • 風俗ポルノ税は一石三鳥

    来年の消費税10%増税の判断が年内に行われる。私は消費税の引き上げは長期的には避けられないが、景気を腰折れさせないためにも、その前にやるべきことはやり尽くしてからだと考えている。以前に提案したタバコ税の引き上げもその例だ。他にもパチンコ税なども最近話題に挙がっており、大いに進めるべきだと思うが、もう一つ検討に値するのは性風俗・ポルノ税だ。 一説によると、日の風俗産業の市場規模は5兆6千億円にものぼり、これにポルノ産業を加えると6兆円を超える。社会的に規制、抑制されるべきであると考えられているにもかかわらず、タバコ税や酒税、ギャンブル(公益目的の交付金含む)のように特別税が課されていないのは不思議なくらいだ。 イタリアでは実際に2008年にポルノ税が導入され、税率25%が課されているという。これは、日のタバコ税の税率が約6割、ガソリン税が約4割であることを考えると決して高い数字ではない。

    風俗ポルノ税は一石三鳥
  • 米国版まねきTVサービスも最高裁で違法に(その3完)

    まず日米の最高裁判決の内訳を比較してみた。1ページあたりの情報量もエーリオ判決の方が多いので、実際にはもっと開きがありそうだが、手っ取り早いページ数で比較すると下表のようになる。 エーリオのサービスに対して著作権侵害を認めた法廷意見(多数意見)は18ページと、7ページのまねきTV判決の倍以上となっている。そして、判決がイノベーションに萎縮効果をもたらすおそれは少ないとの説明((その2) 参照)に3ページを割いているが、まねきTV判決にはそうした説明はない。 法廷意見のようにケーブルテレビに類似したサービスを提供しているという漠然とした基準で侵害と判定するのは、イノベーションに対する萎縮効果を招くおそれがあるとの理由で、法廷意見(6人の判事が賛同)に賛同しなかった反対意見(3人の判事が賛同)も13ページとまねきTV法廷意見の倍近い。 まねきTV判決は5人の判事が全員賛成したため反対意見はない

    米国版まねきTVサービスも最高裁で違法に(その3完)
  • 米国版まねきTVサービスも最高裁で違法に(その1)

    一昨年、米テレビ局を震撼とさせた2件の訴訟(その1)で、エーリオというベンチャー企業がはじめたクラウドTVサービスをめぐる訴訟の地裁判決を紹介した。地裁の合法(非侵害)判決を高裁も支持したため、テレビ局は最高裁に上訴していた。6月25日、米最高裁は一転して侵害を認める違法判決を下した。 この判決を日の最高裁が2011年に下した類似サービスに対する判決と対比しながら紹介する。日の判決は直近では「石あたま判決」を下した最高裁裁判官(その1)で紹介したまねきTV判決である。結論は同じ違法(侵害)判決だが、判決から読み取れる新技術、新サービスに対するスタンスが対照的だからである。 エーリオはデータセンターに日の1円硬貨とほぼ同じ10セント硬貨のサイズの小さなアンテナをユーザごとに用意して、地上波を受信。これもユーザごとに割り当てた録画容量に40時間まで録画できるようにした。 上図のとおりアン

    米国版まねきTVサービスも最高裁で違法に(その1)
  • 工学者が見る大飯原発差し止め判決の誤り

    奈良林直 北海道大学大学院工学研究院教授 日保全学会会長 福井地裁は、5月21日、福井や大阪など22都道府県の189人が関電を相手に大飯原発の運転再開の差し止めを求めた訴訟で、差し止めを命じる判決を言い渡した。報道されているように、「地震の揺れの想定が楽観的で、安全技術や設備は脆弱で、大飯原発の半径250キロメートル以内に住む人の人格権を侵害する具体的な危険がある」というのが判決の骨子である。 この判決は、科学技術を否定し、絶対的なゼロリスクを求める不適切な判決だ。以下、具体的に問題点を指摘する。 (1)原子炉は地震で壊れたことはない 判決では、過去10年間に4つの発電所で5つの想定を超える地震があったと指摘しているが、いずれの地震においても原子力発電所の一次系(原子炉の防護を行う保護系統)に地震による致命的な損傷は発生していない。 これは、発電所の配管や機器の設計が、実力的に十分な余裕

    工学者が見る大飯原発差し止め判決の誤り
  • 福井地裁の大飯原発差し止め判決を批判する(速報版) : アゴラ - ライブドアブログ

    判決を伝える福井新聞号外 福井地裁(民事第二部・樋口英明裁判長)が21日、関西電力の大飯原発3、4号機の差し止め判決を出した。筆者は判決文を通読した(前半)(後半) その論理構成は、法律的な粉飾をしているが、読むとおかしなところが多い。原発の賛否に関わらず、裁判所、ならびに裁判官の能力を問題にするべき判決だ。中立ではなく、巷の反原発活動家と同じような問題のある論理構成を繰り返している。 1・適切な判断を裁判所ができるのか 大飯3、4号機は、2012年7月に野田佳彦首相の政治判断で、同年夏場の関西の電力不足を避けるために再稼動した。13年9月に定期検査のため停止している。14年7月に施行された新安全基準に基づき、再稼動の申請中だ。原子力規制委員会の審査が問題だらけなことは、今回の論考では省略する。 関電側は、地元住民などからなる原告の主張に根拠法はないと主張している。それは妥当だ。原

    福井地裁の大飯原発差し止め判決を批判する(速報版) : アゴラ - ライブドアブログ
  • 片山逮捕で霞んだ朝日の予告付き特ダネ

    最近忙しくて、なかなかブログを書くヒマがないというか、お客さんの「目」があって書きづらいんですよね。僕の今の業はコンサルタントであって、ライターではないにも関わらず、分析していないエクセルの生データを明日まで記事付けて出せなんてムチャぶり発注が多くて、そんな中でもブログ書くと怒られてしまいそうで、まー、業務体系見直しを考えているこの頃です。それでもこれは書いておかねばと思ったのが、朝日新聞の特ダネのお話なわけです。 ※朝日新聞デジタルの「吉田調書」の特集バナー すでにお読みの方も多いと思いますが、福島第一原発で、事故当時の所長だった故・吉田昌郎さんが、政府の事故調に対して答えた内容をまとめた「吉田調書」を、朝日新聞の記者が入手して特ダネとして放ったわけです。さっき近所のコンビニで紙面を買いましたが、所員の9割が一時「敵前逃亡」した事実が明らかになったわけです。吉田さんのまさに魂の激白とで

    片山逮捕で霞んだ朝日の予告付き特ダネ
  • 特許訴訟で衆知を集める知財高裁(その1)

    知財高裁が特許訴訟の争点についての意見を公募している。米アップル日法人と韓国サムスン電子は、スマホの通信技術の特許の使用条件をめぐって争っているが、その控訴審で意見募集した。日では初の試みで、米国で採用されている「法廷助言制度」にならったもの。筆者も「著作権法がソーシャルメディアを殺す」(以下、「小書」)第7章で、司法による著作権法改革の具体策として提案。脱稿後、ブログ「グーグルの書籍検索サービス合法判決でますます拡大する日米格差(その2)」(以下、「グーグル判決」)でも提唱した制度である。 法廷助言制度は当事者以外の第三者が、裁判所の友(Amicus Curiae)となって裁判所に意見(Amicus Brief)を提出する制度。筆者は05年に、ファイル交換ソフトの著作権侵害責任が問われたグロッグスター事件の米最高裁での口頭弁論を傍聴。この時に法廷助言の効用を実感した。提出された40

    特許訴訟で衆知を集める知財高裁(その1)
  • 紙とネット、校閲力の差はまだまだ

    先日、BLOGOS編集部の依頼で、都知事選のネット選挙を振り返る対談企画に参加してきた。うさみんが衝撃的な発表をしているので、編は公開後にお楽しみに。。。と予告はこれくらいにして、うさみんや編集部の方々から、「ネットメディアへのダメ出し」「新聞等の既存メディアの内輪話」をもっと書いてほしいと要望があった。 ●ネットは編集者を雇うのも大変 まー、確かにブログ論壇界隈では「マスゴミの報道はなっちょらん!」的な既存メディアへの悪口を書く方がPV伸びるんだろうけど、この1年余り、有名なネットメディアのスタッフの皆さん方とも業や自分の言論活動のことで色々やり取りさせていただいて、業界的な課題が見えてきたことも事実だ。というわけで、ご要望にお応えして早速指摘してみよう。 一番わかりやすいのは、編集スタッフの「校閲力」ですね。そもそもネットメディアの場合、執筆者の投稿をそのまま掲載する媒体もあるけど

    紙とネット、校閲力の差はまだまだ
  • 日銀の「倍増」する時代錯誤の産業政策

    きょうの株価は後場になって急伸した。その原因は日銀の金融政策決定会合で、日経は「日銀のサプライズ 「倍増」に沸いた日株」とはやしているが、これはサプライズでも何でもない。中身を読めばわかるように、それは「成長分野」に融資した銀行への低利融資枠を3.5兆円から7兆円に倍増させるだけで、200兆円を超えるマネタリーベースとは比較にならない。 この「成長基盤支援制度」なるものは、日銀の来業務ではない政策金融である。量的緩和が息切れして株価が下がってきたが、ここで追加緩和すると消費税が上がったとき打つ手がない。そこで株式市場のバカな投資家を「倍増」という言葉でだまそう――という黒田総裁のもくろみは見事に当たったわけだ。 きょうの言論アリーナで、トバイアス・ハリスもいっていたように、こういう「成長分野」に裁量的に資金を配分する産業政策は、うまく行った試しがない。政投銀などもいらないという声が強い

    日銀の「倍増」する時代錯誤の産業政策
  • ビットコインと企業ポイント(楽天ポイント、Tポイント)の違い

    ビットコインと企業ポイント(楽天ポイント、Tポイント)などの違いがわからないという意見がありましたので、簡単に解説したいと思います。 まず、企業ポイントと呼ばれるものですが、楽天ポイント、Tポイントが代表的ですね。アマゾンもポイントがあります。さらに、航空会社のマイレージ、これもポイントの一種です。agodaなどのホテル予約ポイント、近くの商店街のお店でもポイントスタンプがあるとおもいますが、あれも企業ポイントの一種です。 いまやあらゆる企業でこの手のポイントが発行されています。 企業ポイントというのは、次のような性質をもっています。 ・買い物をするとおまけで貰える ・その企業で次のサービスを購入するときに使える 一方で ・その企業のサービス購入にしか使えない ・他人に譲渡できない となっています。 さらに解説します。 入手法(発行) 企業ポイントは、基的には買い物をしたときに貯まるとい

    ビットコインと企業ポイント(楽天ポイント、Tポイント)の違い
  • 都民のための東京都知事選の争点入門(6)

    今般の東京都知事選挙に向けて、拙稿「都民のための東京都知事選の争点入門」での総論に引き続き、各論の最終回として、都と区の利害調整を取り上げたい。 日の地方自治は、住民に身近な行政サービスである市町村事務と、広域的に便益が及ぶ行政サービスである府県事務から成る。この事務分担は、一般的に、都道府県が府県事務を担い、市町村が市町村事務を担うことになっている。 これに対し、東京都(都庁)は、多摩地域においては府県事務を担うが、特別区部では府県事務だけでなく一部の市町村事務も担う存在である。だから、特別区部にとっては、都知事選挙では、一部の身近な行政サービス(市町村事務)をどうするかも、問われるべき争点となる。 この背景として、東京都には、他の道府県と異なる都区制度がある。特別区は、市町村とほぼ同格の基礎自治体だが、税制上は市町村が課す税(市町村税)を、一部直接課さないこととなっている。それは、固

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  • ビットコインのイノベーションの本質

    昨日の、日経新聞電子版(発行者なき通貨ビットコイン 世界で「採掘」続々)でも、ビットコインの仕組みについての誤解があった 「もっとも、こうした採掘の仕組みも上限額も誰かが保証しているわけではなく、永続するとは言い切れない。記者が試しに2000円を出して購入した0.026ビットコイン。スマホを見ながら「あした、このビットコインが消えていたら」と少し不安になった。」 採掘上限を誰かが保証していないから不安といった部分は深刻な誤解だ。記者は、仕組みについての無理解の不安で記事を書いているようにしか思えない。 そもそも、この記者のように、ビットコインへの疑念は、 「管理する中央の権威付けがないのに、どうして取引や、全体の仕組みを保証するのか?」 という点に集中しているようにも思える。 誰も管理していないのに、どうしてビットコインの残高が正しいと保証されるのか?どうして誰から誰に送ったといったことが

    ビットコインのイノベーションの本質
  • 主権国家のトリレンマ

    今週のメルマガでラフに書いたが、ちゃんと説明したほうがいいので補足しておく。経済学で、国際金融のトリレンマとしてよく知られている話がある。これは 1.自由な資移動 2.固定為替相場 3.金融政策の独立性 の3つのうち2つしか同時に満たせないという問題で、1930年代には1と2を維持したために3が失われ、アメリカの大恐慌が世界中に伝染した。1970年代にも外為市場が動揺したため、2をやめて変動為替相場制にして1と3を維持している。 ユーロ圏では、竹森俊平氏のいうように、1と2を維持しているために南部から北部への大規模な資逃避が起き、ECB(実質的にはドイツ)が金融政策でその赤字を補填している。同じようなトリレンマが主権国家にもあり、次の3つのうち2つしか同時に満たせない。 1.自由な人口移動 2.共通の通貨 3.各地方の財政的独立性 日では1と2を満たして3を犠牲にし、国が地方財政の赤

    主権国家のトリレンマ
  • 都民のための東京都知事選の争点入門(5)

    今般の東京都知事選挙に向けて、拙稿「都民のための東京都知事選の争点入門」での総論に引き続き、各論をあと2つご紹介したい。今回は各論第4弾として、都内インフラや住宅の耐震化を取り上げたい(次の最終回は、都と区の利害調整を取り上げる予定)。 東京のインフラや住宅は、高度成長期に集中的に投資・整備が行われたため、今後一斉に更新時期を迎える。東京都が建設した道路、橋梁、上下水道、浄水場、都営住宅などは、東京都の予算からその維持・更新のための費用を捻出しなければならない。 また、都内においては、震災時に火災や建物倒壊などの危険性が高い木造住宅密集地域が、環状6号線と環状7号線に挟まれた地域(すなわち山手線外側や中央線沿線の地域)に依然として多く存在する。さらに、都内における築40年以上の分譲マンションの老朽化が、今後加速的に進む見通しである。こうした地域では、単に東京都がお金を出せば解決するという訳

    都民のための東京都知事選の争点入門(5)
  • 国際社会の「NG集」 --- 岩瀬 大輔

    何年か前から飛行機はできるだけANA/スターアライアンス系に乗っている岩瀬です。いつもお世話になっています。ロイヤルユーザーとして、先週話題になっていた、ANAのテレビCMについて一言。 金髪で鼻が高い白人の変装をした日人が登場するテレビCMの何が問題だったのか。 「人種差別的」であったということではない。英国メディアの報道でも “racist” とカギカッコ付きで報道されている(つまり、「そう言っている人がいるけど大げさちゃう?」というイギリス人のニュアンスが含まれている)。 問題となったのは、racial discrimination(人種差別) ではなく、racial stereotype(人種ステレオタイプ) であり、それに表象される人権意識、国際感覚の欠如である。この問題は、海外に出かける皆さんは、いわば世界のプロトコールとして知っておいた方がいい。 留学中に経験したのだが、国

    国際社会の「NG集」 --- 岩瀬 大輔
  • タブー化し、ないものにすることが問題の解決につながるのか

    日テレドラマ「明日、ママがいない」のスポンサー8社全社がCM出稿を取りやめたそうだ。作品の過剰な演出に批判が出ることは分かるが、それを通して伝えようとしているメッセージや問題提起を深く吟味せずに、世の空気におされ保身のために判断されたものであれば残念だ。日テレ側はそれでも放送を継続すると表明しているが、今後、児童養護施設などをテーマにした番組や作品がタブー視され、取り扱われにくい空気が残ることを危惧する。 これまで私は、このドラマへの評価に関しては、何よりも施設出身者の声に耳を傾けるべきで、なかには作中の子どもたちに共感し評価している声もあること、作品の問題提起を深く考えずに「子どもたちがかわいそう」と軽々しく慈善めいた顔をすることへの懸念を綴ってきた。 さらに、ここでもし日テレ側が折れて放送中止ということになれば、後味の悪さだけが残り、児童養護施設や社会的養子縁組、里親など社会的養護につ

    タブー化し、ないものにすることが問題の解決につながるのか
  • 都民のための東京都知事選の争点入門(4)

    今般の東京都知事選挙に向けて、拙稿「都民のための東京都知事選の争点入門」での総論に引き続き、各論第3弾として、多摩地域の高齢化対策を取り上げたい。 日全体でも2020年代にかけて高齢化がさらに進むのだが、東京都は、今まで高齢化率が全国平均より低かったことから、これから急速に高齢化が進む。75歳以上になると、1人当たり医療費がより多くかかることは言うまでもないが、要介護者になる人も急に増えてくる。 医療と介護の給付は、国が制度全体の設計をするものの、地方自治体が実地に担う役割が極めて大きい。東京都知事は、医療や介護にまつわる重要な権限を持っている。だからこそ、東京における医療や介護は、国任せにするのではなく、東京都知事がイニシアティブをどう発揮するかで大きく変わってくる。「高齢者にやさしい街にする」と言うのは簡単だが、都知事になったらどんな権限をどのように行使してよりよくするのか、そこがま

    都民のための東京都知事選の争点入門(4)
  • 都民のための東京都知事選の争点入門(3)

    今般の東京都知事選挙に向けて、拙稿「都民のための東京都知事選の争点入門」での総論と、各論第1弾の「都民のための東京都知事選の争点入門(2)」に引き続き、各論第2弾では、東京都の税収基盤に焦点を当てたい。社会保障などに関する争点については後日取り上げたい。 都政は、お金だけでは語れないが、お金がなければ何もできない。東京都知事選挙の候補者が様々な政策を訴えているが、それらは安定した財源がなければ継続的に実現できない。 さらにいえば、東京都がどの税から多く税収を得るかによって、東京を中心とした首都圏経済にも、東京が直面する国際的な都市間競争にも、大きな影響を与える。 こうした視点から見て、東京都はどのように財源を確保してゆくべきか、新都知事の腕の見せどころでもある。 東京の将来を左右する法人課税のあり方 東京都の行政需要は、社会保障や教育を中心に、好況であれ不況であれ、コンスタントに必要である

    都民のための東京都知事選の争点入門(3)
  • 都民のための東京都知事選の争点入門(2)

    今般の東京都知事選挙に向けて、拙稿「都民のための東京都知事選の争点入門」での総論に引き続き、各論について詳述したい。 まずは、東京都を取り巻く税制の政治状況について取り上げたい。それは、ひいては都政と国政の政治力学の縮図でもある。 東京都の税収の構造は、企業からの税(法人住民税、事業税)に多く依存しているため、景況に左右されやすいだけでなく、景気回復期には他の道府県よりも顕著に税収が増えるため、自治体間の税収格差が拡大し「嫉妬」されるという悩みの種を抱えている。これが、東京都と国との間に微妙な隙間風を吹かせることになる。 こうした状況を、知ってか知らずか、今般の東京都知事選挙で選ばれた新知事は、都政と国政の政治力学の中で、どうリーダーシップを発揮して渡り歩くのかが問われる。 「東京富裕論」の克服と税収基盤の安定化 今後の少子高齢化や大都市行政などのためにも、東京都は引き続き税収の確保が必要

    都民のための東京都知事選の争点入門(2)
  • 国民を信用しない憲法 - 『憲法で読むアメリカ史』

    1788年にできたアメリカ合衆国憲法は、世界でもっとも古く寿命の長い憲法である。その3年後にできたフランスの憲法は2年しかもたなかったが、合衆国憲法は225年以上、何度も修正はあったが、ほぼ原型のまま続いている。これはその制度設計がすぐれていたためだろう。アメリカを理解するためには、憲法を理解することが不可欠である。 Constitutionというのは文字通り訳せば「構成」で、合衆国憲法は各州の法律をつなぐ条約のようなものだ。独立した当時の13の州(State)は主権国家で、独自の軍と法律をもっていた。課税も各州でやるので連邦政府には独自の財源がなく、州際取引には関税がかけられた。ただ独立戦争ではバラバラに戦っていては勝てないので、一種の軍事同盟としてアメリカ合衆国ができたのだ。 だから各州は当初、連邦政府が宗主国のように各州を支配することを恐れ、憲法に反対した。これに対して建国の父は『ザ

    国民を信用しない憲法 - 『憲法で読むアメリカ史』