屋久島西側に広がる西部林道。車1台がやっと通れるほどの県道を走ると、ヤクシカの群れに出くわした。車が近づいても逃げるそぶりを見せない。「レンタカーの人はひかないように止まるでしょ。だからシカも慣れてるんよ」。同行したガイドの岩川政広さん(59)が教えてくれた。 ドライブを楽しみながら世界自然遺産の原生林を見ることができるとあって観光客には人気のスポットだが、原生林の足元はシカに食い荒らされている。 屋久島ではシカの増えすぎが問題となっている。林野庁の今年度の調査によると、西部林道で1平方キロあたり少なくとも29頭のシカが生息。適正数の約7倍だ。ラン系などの屋久島固有の植物も自生していたが、近年はめっきり少なくなったという。樹木医の荒田洋一さん(54)は「このままでは種の多様性が失われていって単純な森になってしまう」と警告する。 シカが増えた原因は、伐採事業でシカのエサ場が増えたことや