結局のところ、ウルマン博士が経営するイギリスのラインファーマ本社が、日本の製薬企業2社に依頼する形で開発が始まったのが2014年。その段階では、日本における中絶件数は20万件を割っていた。薬剤の対象人数が十数万人で1回の使用で終わる。ということは、頭痛薬のように繰り返し使う薬とは異なり、平たく言えば「もうけにならない」。製薬企業の関係者は「対象疾患数が少ない希少疾病用医薬品とそれほど変わらない規模感だ」と話す。 日本の治験の厳格さも立ちはだかった。非臨床試験(動物実験や試験管内試験)に加えて、ヒトを対象にして行う臨床試験も含めれば12種類の試験を求められた。マリオン氏は「そのほとんどの試験は、海外では一切要求されなかった」という。 最終的には、2020年にラインファーマが日本法人を設立する形で12種類の試験をやり遂げ、2023年4月の承認にこぎつけた。日本法人の北村幹弥社長は、最終段階の試