本にとって、装丁は顔であると同時に、営業上の重要な意味を持つ。すなわち、書店の店頭で客の目を引き、思わず手に取らせる、広告としての役割である。編集者たちは、「鈴木の作った表紙は、なぜか目に飛び込んでくる」と口をそろえる。どの本も、客の目を引くために必死のくふうを凝らしている中で、なぜそのようなことが可能なのか。鈴木は、その極意をこう説明する。「不要な要素をそぎ落とし、徹底的に本の個性を削り出すことしかないと思う。どんな本であれ、その内容は新しいはず。ならば今までの本と何が違うのか、その個性こそがウリになるはずだと思います。」鈴木は、自分の色を出すことを嫌う。自分を殺し、本の個性に特化するからこそ、内容を凝縮した、多様なデザインが生まれるのだ。 鈴木は、タイトルの文字の1画1画、その形にまでこだわりぬき、決して妥協することはない。その作業は、時に数日にも及ぶ。それはなぜか。鈴木はこう説明する