「お暑いでしょう、どうぞ背広をお脱ぎになって」 講演の壇上に立った小林秀雄は、司会者からそう促されると、 「そうかい」と言って、 ブワーッ!とジャケッツを脱ぎ捨てる。会場はザワザワ…。 講演はたいてい、「書くのが商売だから講演は苦手で…」とか「発起人が知り合いだから仕方なく義理で…」とか、散々言い訳をしながら始まる。そんなだから、すこぶるスロースターターで、辿々しく、朴訥とした物言いで、講演は進んでいくことになる。 だが、次第に興が乗ってくると、怒りだしてくる。何に対して怒っているのかと言えば、当時のインテリゲンチャ。とりわけ彼らのスタンス、居方(いかた)に対してだ。彼奴(きゃつ)らは本当に日和見で、知識を弄してばかりで身体性・現実性がなく、やれマルクス主義だ、悲劇の誕生だ、実存主義だ、などと様々なる意匠を凝らしては、言葉をただ左から右へと商品のように流していく。そもそれらが意匠なものだか
![小林秀雄の講演CDがすごい | ロックンロール・ブック2](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/adef5d15d2c5f4522ad9dec3f365df53826dda21/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fpds.exblog.jp%2Fpds%2F1%2F200604%2F10%2F19%2Fc0005419_18293816.jpg)