本書は基本的には書下ろしだが、作業途中の経過報告ともいうべき小論を「政治の理論のための覚書」(『明治学院大学社会学部付属研究所年報』四三号、二〇一三年)、「古典古代における「政治」と「経済」について:覚書」(『明治学院大学社会学部付属研究所年報』四四号、二〇一四年)として上梓している。その他にもインタビュー「公共圏、人々が個性を発揮できる場所」(『談』九八号、二〇一三年)で関連する論点につき触れている。 非常に乱暴に言えば本書は、二つの論点を提示しようとしたものだ。 第一に、近代における政治権力をめぐる議論の中には、ある強力な倒錯があった。すなわち「現実存在としてはお互いに大差ない平等な存在であるはずの人間たちの間に、どうして不平等が生じ、支配する側とされる側との分断、対立が生まれるのだろうか?」という問いかけが、そのおおもとの根っこの方にあって全体を規定していたように思われる。そしてそう