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ブックマーク / blog.livedoor.jp/iseda503 (26)

  • Daily Life:知られざるコンピューターの思想史

    September 21, 2022 知られざるコンピューターの思想史 小山虎さんの『知られざるコンピューターの思想史 アメリカン・アイデアリズムから分析哲学へ』は、いろいろな意味で刺激的なである。もっと話題になってもいいと思うのだが、今のところあまり話題に取り上げられている様子がない。それは理由がないことではないだろうと思う。以下、このを読んで思ったことをつらつらと書き留めておきたい。 1 学術的な思想史のとして いきなりであるが、このを学術的な思想史のとして扱うのは現時点ではむずかしいと思う。「学術的な思想史の」でないとしても、あとで述べるように、ある種の歴史観についての学術書として、あるいは思想史に関する一般むけの著作としてはまた評価が異なってくると思う。しかし、歴史そのものを学術的に扱う場合にはそれなりの作法があり、書がその作法に従っているとはいいがたい。あとがき(p

  • Daily Life:ハーツォグ『ぼくらはそれでも肉を食う』

    July 21, 2011 ハーツォグ『ぼくらはそれでも肉をう』 ぼくらはそれでも肉をう―人と動物の奇妙な関係 Anthrozoologyの。Anthrozoologyは「ヒトと動物の関係学」と訳すのが日の学会の名前とも一致していいのだと思う(もっともヒトと動物の関係学会の英語名称はanthrozoologyではないのだが)が、書ではなぜか「人類動物学」と訳されている。 全体としてのメッセージは、動物に対する態度は、動物愛護の活動家であれ闘鶏愛好家であれその中間のもっと一般的な人であれ一貫していないのが心理的に普通だということで、著者自身による非常に多様な人々に対するインタビューと、さまざまな心理学的知見、社会調査の知見などが紹介されている。自分は「菜主義者」だと答える人の6割がなんらかの肉を24時間以内にべている、という調査結果などがおもしろい。 翻訳は、あとで指摘する細か

  • Daily Life:生物学者は「自然主義的誤謬」概念をどう使ってきたか

    July 16, 2020 生物学者は「自然主義的誤謬」概念をどう使ってきたか 最近発表された人間行動進化学会の声明の中で、「自然主義的誤謬」という哲学由来の概念が使われていた。 そこでは、自然主義的誤謬が、「「自然の状態」を「あるべき状態だ」もしくは「望ましい状態だ」とする自然主義的誤謬と呼ばれる「間違い」」という言い方で紹介されている。これを倫理学者が聞いたなら「いや、自然主義的誤謬はそういう意味じゃないんだけどなあ」と言いたくなるところであろう。しかし、進化生物学者と「自然主義的誤謬」という概念の付き合いはかなり長く、それなりの経緯がある。稿の目的はとりあえずその経緯を追うことで、「自然主義的誤謬」という概念の適切な用法とはなんだろうかということを考えることである。 最初に断っておくが、稿はいかなる意味でも体系的なサーベイとはなっていない。どちらかといえば、目立つ事例いくつかをつ

  • Daily Life:井上さんの書評へのお答え

    June 17, 2020 井上さんの書評へのお答え 翻訳家の井上太一さんが『マンガで学ぶ動物倫理』の書評を公開された。 井上太一さんは動物擁護運動(わたしは包括的な名称として「動物保護運動」を使っていますが、ここでは井上さんの表現をお借りします)関連の書籍の気鋭の翻訳家であり、私も井上さんの訳されたはいくつも参照させていただき、勉強させていただいている。そうした方にわれわれのを評していただけるのは大変ありがたいことである。 以下、井上さんが批判的なコメントをされている箇所にしぼってお返事を書きたいと思う。 動物実験をめぐる書の説明は、あたかも国内外における動物実験の規制が、実験業者によって積極的に進められてきたかのような印象を与える。 19世紀から20世紀初頭のフランセス・コビーらの動物実験反対運動は当時の動物擁護運動の主流になることができず、運動として停滞したというのがわたしの認

  • Daily Life:『〈現在〉という謎』の感想

    March 03, 2020 『〈現在〉という謎』の感想 編者の森田さんよりご恵贈いただいた。 www.keisoshobo.co.jp/book/b477659.html 最近はいただいたでもなかなか読む時間がとれず、お礼もままならないことが多い。しかし、書については著者の一人である谷村さんが追加の論考「一物理学者が観た哲学」を公開され、著者間でかなりの行き違いが生じているらしいことがわかった。哲学者と科学者の対話は私にとっても大きな関心事であるので、書を通読して感想を述べさせていただこうと思った。 そういう経緯であるので、以下の感想は谷村さんのノートに触発されて書き始めたものである(ずいぶん時間がかかってしまったが)。しかし、今回の感想は『〈現在〉という謎』のに限定して書いており、谷村さんのノートの内容や、谷村さんのノートにさらに反応していろいろな人が書いたものは念頭においてい

    shinichiroinaba
    shinichiroinaba 2020/03/04
  • Daily Life:社会学における実証主義批判の対象は論理実証主義だったか?

    June 19, 2014 社会学における実証主義批判の対象は論理実証主義だったか? 『現代思想』6月号の「ポストビッグデータと統計学の時代」に寄稿された太郎丸博さんの論考「統計・実証主義・社会学的想像力」(pp.110-121) を読んだ。全体としては同意できる点が多い論考なのだが、論理実証主義をめぐる論点でちょっと気になったところがある。 太郎丸氏は、論理実証主義を「経験的に真であることが検証された命題と、それらの真の命題から論理的に演繹された命題のみにもとづいて科学的な言明は構成されるべきである」(p.112)という立場としてまとめ、それがいくつかの側面から批判されてきたということを(ラカトシュ、ガーフィンケル、ラトゥール、ヘッシーらを文献として引きながら)紹介している。この論理実証主義のまとめは狭すぎる気もするが大きく外しているというほどでもない。 しかし、太郎丸氏は論理実証主義を

  • Daily Life:いちから聞きたい放射線のほんとう

    April 11, 2014 いちから聞きたい放射線のほんとう いちから聞きたい放射線のほんとう: いま知っておきたい22の話 (単行) [単行]菊池 誠筑摩書房2014-03-15 菊池さんからいただいた。ありがとうございます。お礼が遅くなりました。 書は菊池さんの良心がつまっただと思う。そもそも「放射能」というのが何かよく分からないけど気になる、という知識レベルの人に菊池さんが伝えなくてはいけないと思ったことが、そういう人に伝わるような言葉で簡潔にまとめられている。このレベルの平易さを保つのにはそうとう苦労されたと思う。 第一部の前半では放射線そのものについての基礎知識、後半では等価線量と実効線量の違いなど生体への影響についての放射線医学の基礎知識がまとめられている。第二部はどのくらい何について心配しなくてはならないのかについての菊池さん流の答えが整理されている。 第一部の内容

    Daily Life:いちから聞きたい放射線のほんとう
  • Daily Life:捏造と改竄

    March 14, 2014 捏造と改竄 前項のつづきとして、同じく『応用倫理学事典』の項目として書いた「捏造と改竄」も転載する。こちらは長さもほぼ掲載されたとおりのバージョンとなっている。実際に執筆したのが2006年なので内容もかなり賞味期限が切れている。 ***** 捏造 捏造(fabrication)は研究者の倫理においてもっとも戒められるべき行為として最初に名前があがるものであり、データがまったく存在しないところであたかもデータが存在するかのように装うことを言う。発見物自体が捏造品である場合や、やってもいない実験や調査をやったかのように論文にする場合がこれにあたる。 日において社会問題となった事例としては、2000年に発覚した考古学における捏造事件が記憶に新しい。これは、在野の研究者が石器を自ら埋め、それを人前で掘り出してみせるというやり方で遺跡を捏造したものであり、毎日新聞の独

  • Daily Life:クレジットと盗用

    March 14, 2014 クレジットと盗用 最近研究における盗用の問題が世間で話題になっているようなので、この機会に、かつて『応用倫理学事典』(加藤尚武編、2007年、丸善)の項目として書いた「クレジットと盗用」という文章を以下に転載する。実際に掲載されたバージョンは字数制限の関係上この半分くらいに削られているので、以下は「長いバージョン」である。もっと簡潔な解説をもとめる方は『応用倫理学事典』を参照されたい。 文中でも触れられる捏造と改竄については次項参照。 ****** 研究者倫理において、捏造や改竄と並んで代表的な悪事とされるのが盗用(plagiarism)である。アメリカ政府の公正研究局(Office of Research Integrity)では三つの頭文字をならべてFFPとよび、研究上の不正行為とはこの三つであるという狭い定義を用いている(山崎2002、ステネック2005

  • Daily Life:応用哲学・倫理学教育研究センター

    April 09, 2012 応用哲学・倫理学教育研究センター というものがこの4月から京都大学文学研究科内のセンターとして発足しました。まだ看板だけの名目的な存在ですがだんだん実質がついてくると思います。 つきましては開所記念のシンポジウムが企画されています。 日時 2012年4月23日14時〜 場所 京都大学楽友会館 「応用哲学と応用倫理のいま」 予定シンポジスト Takashi Yagisawa (カリフォルニア州立大学) Szu-Ting Chen (国立精華大学 台湾) Kai-Yuan Cheng (国立中正大学 台湾) Sang-Wook Yi (漢陽大学校 韓国) 他 正確な情報はまたアップデートしていきます。 また、センターが中心となって全学の大学院生むけの授業(リレー講義)を開講します。「研究科横断型教育科目(Bタイプ)」というやつです。 前期 応用哲学入門 全8回、

    shinichiroinaba
    shinichiroinaba 2012/04/09
    八木沢敬先生!
  • Daily Life:「科学的思考」のレッスン

    November 28, 2011 「科学的思考」のレッスン 「科学的思考」のレッスン―学校で教えてくれないサイエンス (NHK出版新書) 著者からいただいた。ありがとうございます。 第一章から第六章までは科学哲学の紹介、第七章から終章にかけては科学技術社会論の紹介、という構成になっている。科学哲学的な内容としては、境界設定問題、科学的説明、検証理論などのオーソドックスなテーマを取り上げているのだが、「科学的思考」とは何かを考える、という問題設定の下に非常によく消化されていて、「無理に科学哲学にこじつけました」という感じはまったくない。特に、「科学的説明」という、科学哲学の定番の話題の中でもどちらかというと玄人好みの(言い換えれば哲学者以外にとってはどうでもいいような)話題をこの流れの中に自然に組み込んだ第三章は工夫が光る。第六章では「共通原因の原理」が(その言葉は使わずに)解説されている

  • Daily Life:『医学と仮説』 (つっこみその4)

    November 23, 2011 『医学と仮説』 (つっこみその4) 「その1」「その2」「その3」は以下の場所です。以下のコメントを読むための注意書きもそちらを参照してください。 http://blog.livedoor.jp/iseda503/archives/1678777.html http://blog.livedoor.jp/iseda503/archives/1678778.html http://blog.livedoor.jp/iseda503/archives/1684840.html p.48 「科学の基が希薄なため、仮説のレベルが混同されている」 pp.49-50 「日では「科学とは何か」が問われもせず、人間の研究が科学と考えられず、実験が必要条件と勘違いされた上に、仮説や観察対象のレベルの混同が放置された。人か、実験動物か、細胞か、遺伝子か、分子か、原子か、

    shinichiroinaba
    shinichiroinaba 2011/11/24
    とか言ってる場合じゃねーぞ
  • Daily Life:『医学と仮説』(つっこみその3)

    October 25, 2011 『医学と仮説』(つっこみその3) 「その1」と「その2」は以下の場所です。 http://blog.livedoor.jp/iseda503/archives/1678777.html http://blog.livedoor.jp/iseda503/archives/1678778.html そちらにも追記しましたが、著者の津田さんとのディスカッションの 中で、津田さんより、最初の2つのエントリーについていろいろ意見をいただいています。それを踏まえて注記しておきますが、以下の事項の中には、わたしが「これはひどい」と思ったものから、一応つっこんでおこうというレベルのものまで、さまざまなものが含まれます。内容も科学哲学には限定されません。以下を読む方はそのことをご理解下さい。 さて、今回は第二章中盤、35ページから47ページまでコメントします。 p.35「し

    shinichiroinaba
    shinichiroinaba 2011/11/24
    長期戦の様相
  • Daily Life:科学が進化する5つの条件

    October 13, 2011 科学が進化する5つの条件 市川惇信さんという方の科学が進化する5つの条件 (岩波科学ライブラリー)というを読んだ。 読むことになったのは、少し前の記事で、津田敏秀さんのへのコメントの中でこんなことを書いたせいである。 「なぜここで突然「市川氏」の科学哲学の話になるのか。市川氏はそもそも何者なのか(文献表を見ればもちろん分かるわけだが、文中での登場の仕方は唐突で ある)。科学の方法論について語る科学哲学者はたくさんいるし、一般入門書も何種類もあるわけだが、なぜそれらはすべて無視で科学哲学を専門にしない市川 氏の議論だけが紹介されるのか。」 この記事は市川さんについて大変否定的な言及のしかたになってしまっていたが、実際に読んでみてだいぶ意見をあらためた。市川さんには陰ながら (?) お詫びしたい。罪滅ぼしに紹介とコメントをしたい。 こので科学の基的方

    shinichiroinaba
    shinichiroinaba 2011/10/13
    めも
  • Daily Life:医学と仮説 (つっこみその2)

    September 29, 2011 医学と仮説 (つっこみその2) [2012年8月27日追記:川端さんのブログでのディスカッションを拝見した結果、コメントを一件撤回することにいたしました。詳しくは下を御覧ください。] [2011年10月18日追記:著者の津田さんとのディスカッションの中で、津田さんより、以下のような列挙のしかただと、「これはひどい」とわ たしが思うような項目がこれだけの数あるかのような印象を読者に与えるので困る、という趣旨のクレームがありました。そのため、注意書きを書き添えます。 以下の事項の中には、わたしがひどいと思ったものから、一応つっこんでおこうというレベルのものまで、さまざまなものが含まれます。内容も科学哲学には限 定されません。以下を読む方はそのことをご理解下さい。] 医学と仮説――原因と結果の科学を考える (岩波科学ライブラリー) クチコミを見る 第二章の最

    shinichiroinaba
    shinichiroinaba 2011/10/01
    ご苦労様です
  • Daily Life:医学と仮説 (つっこみその1)

    September 29, 2011 医学と仮説 (つっこみその1) [2011年10月18日追記:著者の津田さんとのディスカッションの中で、津田さんより、以下のような列挙のしかただと、「これはひどい」とわたしが思うような項目がこれだけの数あるかのような印象を読者に与えるので困る、という趣旨のクレームがありました。そのため、注意書きを書き添えます。以下の事項の中には、わたしがひどいと思ったものから、一応つっこんでおこうというレベルのものまで、さまざまなものが含まれます。内容も科学哲学には限定されません。以下を読む方はそのことをご理解下さい。] 医学と仮説――原因と結果の科学を考える (岩波科学ライブラリー) クチコミを見る 疫学者の津田敏秀さんの著作。以前から疫学の重要性を訴え、たとえば水俣病を中毒事件として扱えばもっとうまく処理できたはずだという議論など、興味深い論点をいろいろ出されて

  • Daily Life:野崎泰伸『生を肯定する倫理へ 障害学の視点から』

    July 10, 2011 野崎泰伸『生を肯定する倫理へ 障害学の視点から』 生を肯定する倫理へ―障害学の視点から を著者から御恵投いただいた。せっかくなので少しコメントしたい。記事が長いので三つに分けて投稿する。 書は著者が障害者としての自らの体験もふまえつつ、現代倫理学の主流のアプローチに対して「生を肯定する倫理」を打ち出すという意欲的な著作である。障害学と現代英米の倫理学は、非常に近い問題を扱う面もあるにもかかわらず、あまりきちんとした突き合わせがなされてこなかった。その意味で、両方の文献を読み込んだ著者の議論には参考になる視点が多い。 以下は、現代英米倫理学、特に功利主義に近い立場から、野崎氏の論述がどう読まれるのか、という応答である。それにしても、書で扱われているすべての話題に反応するのは難しいので、話題は三つに絞る。一つは「社会モデル」をどう考えるか、二つ目はシンガーをどう

    shinichiroinaba
    shinichiroinaba 2011/07/11
    野崎氏本出したのか……
  • Daily Life:応用倫理学に未来はあるか?

    shinichiroinaba
    shinichiroinaba 2011/02/10
    えしっくすぼうる?
  • Daily Life:功利と直観

    January 06, 2011 功利と直観 功利と直観―英米倫理思想史入門 著者:児玉 聡 勁草書房(2010-11-26) 販売元:Amazon.co.jp クチコミを見る 著者から御恵投いただいた。ありがとうございます。ようやく最後まで読めました。以下書評めいたことを簡単に。 書は18世紀から21世紀にまたがる功利主義をめぐるさまざまな論争を「功利主義」対「直観主義」という対立軸で捉えた意欲的なである。私自身、18世紀あたりは不案内で、いろいろ勉強になることが多かった。内容も、ヘアやロールズの紹介など、わたしに分かる範囲ではおおむね正確だと思われる(『道徳的に考えること』の出版年が1986年になっていたりという細かいミスはあるが)。ただ、110ー111ページのムーアと(メタ倫理学的な)直観主義の関係についての記述が若干疑問である。そこに話をしぼって「バグとり」をしたい。 著者は

  • Daily Life:予知能力

    February 01, 2011 予知能力 こちら経由で知った話題。予知能力を実証したという論文がJournal of Personality and Social Psychologyに載るというのでサイエンスでも記事になるくらい話題になっているらしい。 実験の概要は上の2つのリンクを参照。被験者はコンピュータ上に表示された二つのカーテンのうち一方をえらび、そのあとでコンピュータが乱数を使ってどちらかのカーテンの背後にエロ画像を用意する、という流れで、被験者がエロ画像を当てる率が有意に高いとか。 すぐに思いつくのは乱数がちゃんと乱数になってないんじゃないかという疑問だが、元論文を見ると、そのあたりはけっこう慎重に議論している。100人規模の実験で有意差が何度も出ているようなので「たまたま」も考えにくい。ざっと見たところJPSPに載るくらいだから方法論はしっかりしている。あとは使用したプ

    shinichiroinaba
    shinichiroinaba 2011/02/01
    まあ。