Daily Life:生物学者は「自然主義的誤謬」概念をどう使ってきたか

July 16, 2020 生物学者は「自然主義的誤謬」概念をどう使ってきたか 最近発表された人間行動進化学会の声明の中で、「自然主義的誤謬」という哲学由来の概念が使われていた。 そこでは、自然主義的誤謬が、「「自然の状態」を「あるべき状態だ」もしくは「望ましい状態だ」とする自然主義的誤謬と呼ばれる「間違い」」という言い方で紹介されている。これを倫理学者が聞いたなら「いや、自然主義的誤謬はそういう意味じゃないんだけどなあ」と言いたくなるところであろう。しかし、進化生物学者と「自然主義的誤謬」という概念の付き合いはかなり長く、それなりの経緯がある。本稿の目的はとりあえずその経緯を追うことで、「自然主義的誤謬」という概念の適切な用法とはなんだろうかということを考えることである。 最初に断っておくが、本稿はいかなる意味でも体系的なサーベイとはなっていない。どちらかといえば、目立つ事例いくつかをつ

[haruhiwai18]

"しかし、用法としてあまり好ましくない面があるので、できれば「自然さからの議論」など、問題の本質にそった、混乱のおそれの少ない用語法を使った方がいいのではないだろうか。"　→穏当な結論に

[Nihonjin]

「遺伝的バイアスが望ましくない具体例として、戦争をする傾向や子供をできるだけ多く生む傾向が、狩猟採集生活では適応的だったが現在ではむしろ破滅的であるということが挙げられている」／ウィルソンの言。

[akymrk]

"ヒュームのテーゼ違反や現状肯定判断", “多くの生物学者が参加した論争においてこの概念がこのように使われた" => !自然主義的誤謬はこうした意味の用語として定定着”, "別の用法としての地位","自然さからの議論"

[tick2tack]

“生物学的な「自然さ」から規範を導き出す議論には、別の名前がある。「自然さからの議論」(argument from naturalness)というものである。これは、あることが「自然」であることを論拠として「そうあるべきだ」と結論する”

[sakstyle]

倫理学者からすると誤用に見えるが、ウォディントン、シンプソンを経て社会生物学論争の中で定着した用法で誤用とまでは言えない。が混乱の元なので「自然さからの議論」という語を提案するもの

[paravola]

「である」から「べきである」は導出できない、というヒュームのテーゼ／...普遍的人権といった価値目標が社会生物学から導けると考えていて、まさにウィルソン自身が言う意味での「誤謬」を犯しているように見える

[machida77]

伊勢田哲治先生による自然主義的誤謬の用例史

[uunfo]

この手の人達ってなんでこんなにまだるっこしい言い方するの？

[hobbiel55]

「このように定着した用法は、もはや誤用ではなく別の用法としての地位を認めるという判断も十分可能だと思われる。」

[barringtonia]

"「自然主義的誤謬」という概念の使用の歴史<略>からいえば、生物学者による用法は誤用とはいえない。しかし<略>できれば「自然さからの議論」など、問題の本質にそった、混乱のおそれの少ない用語法を使った方がいい"

[ebmgsd1235]

“ただ「他の」性質であるというだけでなく、絶対的に、全面的に、善さと同一である”ムーアの自然主義的倫理の誤謬、「である」から「べきである」への導出はできないというテーゼの元ネタ、カントの存在と当為。

[Outfielder]

「人間行動進化学会の声明の中で」「生物学的な「自然さ」から規範を導き出す議論には、別の名前がある。「自然さからの議論」というもの」だって自然主義的誤謬って言ったほうが難しそうで格好いいじゃん