組織行動論やワークキャリア論において近年脚光が当たっている概念が「アイデンティティ・ワーク」です。Caza, Vough, & Puranik (2018)による文献展望によれば、組織場面や職業場面でのアイデンティティ・ワークとは「社会的文脈における集団的、役割的、個人的なアイデンティティ(自分とは何かという意味付け)の形成、修復、維持、強化、更新、または拒絶を目的とした個人の認知的、散漫的、物理的、行動的な活動」というように定義されます。やや分かりにくい定義ですが、要するに、キャリアにおいて、自分とは何かといった「アイデンティティ」を形成したり、修正したり、変更したり、維持・強化したりする活動です。 ではなぜ、近年になってアイデンティティ・ワークが注目されているのでしょうか。まず、「私は何者であるか」というアイデンティティとは人間にとってもっとも基礎的な要素であり、アイデンティティが私た