横浜物語（1） (まんがタイムコミックス) ■ 【オススメ】マンション隣人ものだが舞台をうまく絡めているのが ４コマとしては珍しい。 ［アイディア］横浜を絡めた４コマ ［エピソード］隣家の女性がアプローチ？ ［ストーリー］二人のつかず離れずな関係で大きな物語も動かす 彼女と一緒に暮らすために決めた、ランドマークタワーの見える部屋。 しかし今は別れて一人。生活は結構投げやりに。 そんな彼がある日、布団を干したまま出かけると雨が。 これは困った、と思って帰ると、布団は取り込まれ、 そしてその上で、出会ったばかりのお隣りさんが眠り込んでいた。 彼女の残り香に気になる主人公。一方の彼女は、 彼のことを知っている風で、その後、ストーカーだと 告白する。と言っても、それは結果的な話。 派遣社員で働いていた先に主人公がおり、 そして、住んでいる部屋の隣に彼がやってきたという偶然。 二人は共に飲んだり出歩

エリア51 1 (BUNCH COMICS) ■ 【オススメ】異形と訳ありの棲む街、それが51番目の州、エリア５１。 ［アイディア］異形と人間との混成 ［エピソード］リアリティとファンタジィの狭間 ［ストーリー］主人公のバックストーリーは今のところ後ろに隠す アメリカ５１番目の州、存在していないことになっている、エリア５１。 神話や伝説などの怪物、あるいは付喪神、などなど異形の者が存在し得る街。 そこにはワケありの人間も流れてくる。ヒロインは、そんな一人。 元刑事で現探偵、訳ありな拳銃片手に大暴れする。 河童を相棒に、スタイリッシュな絵でもって、一話完結のエピソード。 相手は異形の者であるからして、哀しげな話が多い。が、この絵が バランスをとり、必要以上にメロウにはしない。まぁハードボイルドなんだろうが、 女性が主人公だとその表現は合わないか。ハードボイルドは女々しさと 紙一重で、でも女々

バックステージ (ビッグコミックス) ■ 劇団運営に関する物語。有川浩「シアター！」に近い。 ［アイディア］銀行員が門外漢の劇団の制作になる設定 ［エピソード］劇団の状況をざっと描いていく ［ストーリー］一巻完結なので焦点はっきり 銀行をリストラにあい、妻とも別居、毎度喫茶店で離婚届をつきつけられている。そんな主人公はバイトのウェイトレスから自身の劇団のチケットを渡され、見に来ませんかと誘われる。そしてその雰囲気に感動し、流れで打ち上げにも参加。主宰者に惹かれる一方、相手も元銀行員で無職という状況に、劇団の制作、経理にスカウトしてきた。 ラグビーで培ってきたチームプレイ、ノーサイドの精神、本当の笑顔を探す、という主人公のキャラクターを一方の軸としながら、もう一方に劇団の成長ということを軸として展開する物語。人気はあるが次のステージに上がりきれない劇団の、問題点はどこにあるのか。主人公は、そ

遠野モノがたり (バンブーコミックス) ■ 【オススメ】遠野舞台のモノローグ４コマ。 ［アイディア］遠野という舞台の特殊性 ［エピソード］普通の日常に徹するところが良い ［ストーリー］行って、そして帰ってくるまでの話としてまとまり良し 「中央モノローグ線 」で進行役でもあった人物、著者の投影という部分も大きいイラストレーター、 なのかを遠野に引越させて生活させた物語。 自身も遠野に住んでいる著者の体験を投影した作品、なのだろう。 「遠野物語」の舞台であり、それを観光資源としている場所。 主人公はそこで、普通に仕事をしながら日常を過ごす。そのあたりの ギャップは面白い。しかし一方で、いつかは帰る、季節が巡れば やがては帰る、という前提での引っ越しで、結局最後には、 座敷童子のおかげか 主人公に運が向いてくる、そのことによって彼女は遠野を去ることになる。 こうしたストレンジャーが主人公なので、

奇異太郎少年の妖怪絵日記 壱 (マイクロマガジン・コミックス) (マイクロマガジン☆コミックス) ■ 【オススメ】霊感の強い主人公は、一人、離れで暮らすことに。 しかしそこには先客がいた。 ［アイディア］ケータイ連載の作品をうまく書籍化 ［エピソード］テンポと語り口の良い一話完結型 ［ストーリー］流れる空気の暖かさと裏にある切なさが絶妙な雰囲気を醸し出す 主人公は自身をナイス美少年と称するようなイイ性格。霊感の強い彼は、本宅から追い出され、ひとり、離れに住むことになったのだが、そこには先客がいた。その女の子は、座敷わらし。 ということで、主人公の前に、妖怪続々登場、という物語。座敷わらしとの同棲もの、との見方もできるコメディ。ページ数というかコマ数の関係もあり、話運びはあっさりとしているが、その割り切り方にセンスがあり、テンポ上々。バックグラウンドの話は切ない部分もありそうだが、それはそれ

グラゼニ (1) ■ 【オススメ】 年収1800万円！でもそれでは全然高収ではない商売がある。 ［アイディア］プロ野球ものとしてユニークなアプローチ ［エピソード］一話完結スタイルは中継ぎワンポイント投手らしい ［ストーリー］ギリギリ感が主題ではあるが、続刊ではもう少し何か欲しい 26歳で年収1800万円。高給取り、ではあるのだが、 高卒のプロ野球選手となると、これはギリギリ。 一軍定着も中継ぎのワンポイント、いつどうなるかわからない。 先がない立場なのである。 グラウンドには銭が埋まっている−プロ野球が職業であるという観点からすれば、 この言葉を体現した、 こうしたピンポイントな描き方もありだろう。今まであまり見ることはなかったが、 なかなかユニークなアプローチである。 彼の強み弱みも、対戦相手の年収にあるというところが、 おかしくも哀しい。 話としては一話完結。全体を流れる物語としては

明治失業忍法帖 1―じゃじゃ馬主君とリストラ忍者 (ボニータコミックスα) ■ 【オススメ】明治初期、じゃじゃ馬娘と忍が恋をする。 幕府が倒壊し、直参だった主人公はリストラ。流れに身をまかせることに した彼のもとにやって来たのは、美人だが腕っ節強く強情なじゃじゃ馬娘。 親の決めた結婚相手が彼なのだという。それで見に来たが、忍者ということで 期待したのに、腑抜けた有様に失望する。そもそも結婚して家に入るなど 御免被る彼女は、破談となるよう画策するのだが。 生きづらい世の中で、忍であり武士であった過去を押し込めて世の流れに身を任せたい主人公、 女であるが自分のままに生きたいヒロイン。彼女は、主人公の実力を目の当たりにし尊敬しつつ、 女学校に進みたいという自身の要望を叶えてくれる主人公と婚約しておけば方便に使えるのではないか、 と考えをシフトチェンジ。主人公もまた彼女の生き方に、自分の足りない欠

水使いのリンドウ 1 (ジャンプコミックス) ■ 【オススメ】竜と皇族が100年の契約をすることで成り立っている国。 しかし竜は新しい契約を結ばないという。国の行方はいかに。 主人公は水使いという、水を操る技術に長けた者。彼は、莫大な報酬を提示され、皇女の護衛役を任される。ちなみに皇女とはご学友、なのだが彼女のことを苦手にしている様子で出来れば引き受けたくないと思っていた。が、竜と契約を結ぶことで成立していた国が、 その竜に新たな100年の契約を拒否されてしまう。交渉にあたっていた皇女はパニック。しかし主人公は、それ以前に、宮中の様子に異変を感じており、その予感は的中する。 竜によって左右される天災、日照りや豪雨、そしてそうした自然を操る魔術がある世界。だがそれが少しずつ変わりつつある。国を守るためとして被害にあっていた土地では民衆の我慢も限界に達しており、さらに民衆でも上下による格差、皇

一匹と九十九匹と 1 (ビッグコミックス) ■ 【オススメ】人は皆変わっているし、人は皆変わりもしない。 援交していて監禁され49日ぶりに解放されたという少女、自身のしたケンカで野球部を出場停止に追い込んだ少年。少年はいつものように少女に２万でしてくれと頼むが殴られる。ケンカの停学明けの少年には嫌がらせが。彼の家を訪ねた少女は、今度は２万で売ってあげる、と彼女から言う。 短編オムニバス作品。題名はルカ伝福音書から。ストレイシープのお話。手元に９９匹がいても見失った一匹を探さざるにはいられない、見つかれば嬉しく思うだろうという話で、その一匹が罪人であるという話でもいいのだが、題名は、一匹にフォーカスしているわけではなく残りにも焦点をあてている。特別であることは特別ではなく、特別でいることは難しい。望むと望まざると。要するに、別に皆変わらないし、だからといって同じではない。 とはいえここで取り

木村くんは男友だち (KCデラックス) ■ 【オススメ】ほんのちょっとのきっかけがなく、 一緒になることのなかった二人は、 それでも今でも腐れ縁。 昔むかし子供のころ、今を遡る22年前、 年賀状を選り分けると、母には男の人の名前から届いたものはなかった。 私は、オトナになっても、男子の友達がおったらええな− そう思っていたヒロインには、結婚してもそのとおりの男友達を 持つことができた。 題名どおりのおはなし。で、当然のように、彼は思いを告白できない まま、ずるずると友達づきあいを続け、離れるにも離れられない距離感で いる、というもの。ヒロインのほうはそういう意識はないのだから、 残酷というか可哀想というか、いや、男はばかだな、という話である。 でもこうしてタイミングを失った男がいる一方、 うまく機会がハマってヒロインの夫となっている人物もいるわけで。 縁というか時の運であるわけだ。 長くヒ

いなり、こんこん、恋いろは。　（１） (角川コミックス・エース 326-1) ■ 【オススメ】 ドジっ子は神様が見えるようになり、 そして互いは友人に。ラブコメと神様、変化ものが 噛み合った可愛らしい作品。 ヒロインはドジ属性な子。彼女には好きな男子がいる。 が、彼の視線を追うと、その先には自分じゃとても叶わない美少女が。 しかもドジゆえに彼に迷惑をかけてしまったヒロインは、 近所の神社で神頼み。するとそこの神様が現れて、 ひとつだけ願い事を叶えてあげるという。 そこでヒロインは、美少女さんになりたい、と口走ってしまい、 結果、変化してしまった。 変身コメディ、かというと、そういう面は持ちつつ、 神様世界の話に転がる展開、一方、好きな男子を応援したい、 と自分は身を引き彼の幸せを願うが、そういう子の好きになった 男子はやはり行動が良い意味で斜め上、さらにヒロインの兄は 霊感あって神社と神様

帝一の國 1 (ジャンプコミックス) ■ 【オススメ】 熱いスポコン漫画の異種、もしくは権力抗争のパロディ。 海軍兵訓練学校を母体とした由緒ある中高一貫の進学校、 ここに通う主人公は、生徒会長を目指して邁進する。 学校の生徒会長という座を賭けた権力抗争を描く物語。 コメディとしてではなく、真剣なものとして題材を扱っているところが ユニーク。 権力抗争を高校生というところまで落として描くところがブラックだが、 現実の政治や企業のそれが小学校の学級会並であることを考えれば パロディでもなんでもないのかもしれない。そうした意図よりも、 スポ根ものや、ロールプレイング系、あるいはトーナメントものなどの 一種として楽しむべきか。 端正な絵柄であり自ら吹出すことをしていない 作品であることも好み。 寄付金の多寡が学級長を決める、というどうしようもない裏事情、 そこに反旗を翻す教師とトリックスターとなる

ごっこ 1 (ジャンプコミックスデラックス) ■ 【オススメ】 禁断の擬似家族物語。30歳男性と幼女の同居生活。 しかし二人に血の繋がりはない。ないどころか、 さらってきた子なのだった。 しっかりしているというかはっきりした性格の 幼女。その子を養う30歳の男やもめが、振り回されつつ、 彼女を甘やかす日々を描く作品である。 が、二人の間に血はつながっていない。 主人公に妻はいない。いないどころか結婚したことがない。 傷ついたままベランダに放り出されていた彼女を、 勝手にさらってきたのである。 擬似家族ものは多くても誘拐というのは少ない。 今度映画になる小説で似たようなものはあるが、 いや、こちらはそれを超えており、主人公はロリコンで 強姦未遂という話まで。しかし彼女が彼を「パパ」 と呼んだことから世界はがらりと変わり、設定は書き換えられた。 擬似家族ものなので、両者が互いを必要にしている様

エコー／ゼオン　（１）　 　 (角川コミックス・エース) ■ 【オススメ】 騒動をネタに小金を稼ぐ少女、 その友人で殆ど言葉を発しない少女、 それらの友人で図体のでかい少年。 この３人が常に一緒に行動するにはワケがある。 学校で起こった事件にクビをつっこみ、 カネをもらって真相を探り解決しようとする少女。 一緒にいるのは仲良しの少女だが彼女は口を殆どきかない。 一方に惚れ、一方には幼なじみの腐れ縁、ボディガードも兼ねている 巨漢の少年。この３人は常に行動を共にしている。 そのなかで最も特殊な能力を持っているのは、 普段しゃべらない少女だった。 声マネ、というか音を操る能力を持つ少女を中心とした物語。 それだけでユニークだが、話は校内から始まりつつ、 その少女以外の二人の素性、特にもう一方の少女に話を移し、 さらになぜ彼らが一緒に行動をしているのか、に遡る。 設定と物語の双方をきちんと用意し

夢のクロエ 1 (電撃コミックス) ■ 舞踏会により栄える王国。 その国で洋裁店を営む少女は、 特別な力でもってその舞踏会に忍び込む。 少女は母の跡を継ぎ、洋裁店を営んでいる。 腕も確かで仕事が次々舞い込むのも、 国が栄えているからこそ。 少し前までは貧しい国だったが、 女王が舞踏会を基盤にした外交を繰り広げて以来、 国力が増している。 そんな中、ヒロインは、 流行のファッションが見たい！と、 舞踏会に忍びこむ。 面白いが読み辛いファンタジー。 構成はひねってあるというべきか、 単に読みにくくなっているというべきか。 複雑な話ではないのでそう面倒ではないのだが、 物語が時間軸に沿っておらず、設定も良くわからないので、 やや戸惑う面もあり。 夢の中に入る能力があり、さらに色々な妖精も知っているヒロイン。 彼女と一緒にいるのは猫の形をした妖精で言葉をしゃべり、 特殊な能力も持っている。このコン

ゴッドシーカー 1 (電撃コミックス) ■ 【オススメ】 小さな領地を守るのは、領主の妹の魔法。 小さな国。与し易しとして襲い来る賊。 その賊たちをおびき寄せたのは、軍事の天才と呼ばれる 領主。そこで領主の妹が、今では世界で発現できる者も 数少なくなった魔法により光の剣を出現させ、 神の一撃により敵を殲滅する。 偉大な力を持った小国を舞台にした物語。 魔法を使える少女は力を行使したくはないがそうもいっていられない。 その兄は領主として才もあり彼女の力に依存するばかりではない。 その二人の幼なじみであり剣の腕が立つ少年は二人と民とを気遣う。 対立する存在として強大な帝国を描き、それと対抗せんとして 小国の魔法に目をつけた同盟からは協力の誘いが。そうした大きな話もあるが、そこからではなく小さな近いところから始めたのが巧い。 小さなエピソードを重ねつつ、世界の大きな動きもちらりと触れる、 という

やさしいセカイのつくりかた 1 (電撃コミックス) ■ 【オススメ】 こんなタイトルだからその手の話なんだろう、 と思うと、突飛な設定もありつつ、 地に足の着いた、ユニークだけれど愛おしい 作品でした。 主人公は在学中の論文が認められ鳴物入りで プロジェクトを立ち上げたのだが、 不況の煽りを食らいスポンサーが倒産。 国からの支援だけでは成り立たない大型プロジェクトが 災いし頓挫する。大学からは別のプロジェクトに移ることを 薦められるが、当人は続行を希望し、大学を辞め、 日本に帰ることを選択する。が、スポンサーのあてはなく。 そこにかつての恩師から高校の講師の仕事を持ちかけられ、 勤めることにしたのだが、場所は女子校、しかも前任者は 生徒に手を出して解雇になっていた学級だった。 飛び級で外国の大学に通っていた主人公はまだ19歳、 初々しさもありつつ、考え方しっかりで理性的、 悩みはするが迷わ

まつのべっ! 1 (1) (まんがタイムコミックス) (コミック) 秋吉 由美子 ■ 【オススメ】 幼馴染の売れっ子女優に思いを馳せる、 幼稚園の先生の物語。 幼なじみの言葉がきっかけで幼稚園の先生になった 主人公。その幼なじみは、女優になっていた。 受け持った園児には、そんな彼女のかつての姿と、 おんなじ顔おんなじ口調の子が。 その子にかつてを思い出し、幼なじみに思いをはせる 物語。 頼りなく、子供にもからかわれる先生。 会えない幼なじみをブラウン管のこちらから応援しつつ すごすコメディは、少しづつ時間が動いていく。 こどもたちの心を描写し、それから今度は 先生の恋に。同僚は主人公のことを好きになるが、 主人公の気持ちは幼なじみに向いていて、 しかも再会を果たす。園児の父兄が実は元恋人 と判明しこちらも再会。主人公をめぐる 恋のトライアングルになって、そして・・・ ここで巻またぎですか！

2010年の総レビュー数は800冊弱（780〜790程度）。その中から、当ブログがオススメする一巻本をご紹介。 1. 新川直司／さよならフットボール ：完結している作品は仕上がりも評価されて不利なこともあるのだが、この作品は一巻の時の期待通りに出来上がった。少女が少年とスポーツで伍していけるギリギリの時期を描く青春マンガ。この手の作品は一巻完結や上下巻ものでは多いのだが、ここまで小気味よい切り取り方で輝きをもった作品はそうはない。 2. 白井弓子／WOMBS ：異種を宿すことで能力が生まれる、という設定で、妊婦を軍事力に使うＳＦ。物語と世界を共に構築する、アイディアのあるＳＦらしいＳＦであり、そのレベルの高さを評価したい。 3. 東村アキコ／主に泣いてます ：評価の高い作品が多い著者だがこのブログとしてオススメするのは本作。絶世の美女が美女すぎて周りも本人も不幸になる、という設定のもと綴ら