鈴木謙介(すずき・けんすけ)『カーニヴァル化する社会』(ISBN:406149788X)を読む。講談社現代新書の表紙は改悪です。 現状認識については悪くない。しかし,理論化に失敗している。 冒頭,50頁まではとても面白い。第1章「〈やりたいこと〉しかしたくない――液状化する労働感」は,私の専門領域と重なることもあって,とても刺激的であった。 ニート(NEET)に「働く意志」が存在していないことを手がかりに議論が始まる。鈴木は,これを社会的なトレンドの変化として捉え,「甘え」「意欲」「自身」といった言葉で表される内面の問題として考察する。そして,〈やりたいこと〉が重要性を持つようになったのは環境的な要因の変化によるものであるとし,予期的社会化(期待的社会化)という社会学の概念を提示する。具体的には,会社に入る前の学生時代に,自らが所属していない準拠集団(=社会人)を拠り所として,自身の行動様