このごろIT(情報技術)の世界でメディアをにぎわせている話題に「ICタグ」がある。商品につけた半導体チップに情報を入れ、電波で受信して在庫管理や防犯などに使おうというものだ。国際的には、MIT(マサチューセッツ工科大学)を中心にして決められた規格「オートID」が標準になり、ウォルマートなどが採用を決めた。日本でも、慶応大学にオートIDセンターができ、実装が進んでいる。 ところが、そこに「ユビキタスID」というのが現れた。まだ規格も固まらず、作っているメーカーは2社だけだが、そのリーダーである東大の坂村健教授は「米国にあわせる必要はない。日本独自の標準を作ることが国益にかなう」として政府の関与を求めている。これは「バーコードは米国の規格だから、日本独自の国定コードを作ろう」というようなものである。 坂村氏がこういうナショナリズムをあおるのは、今回が初めてではない。15年前に彼が進めた「トロン