2012年04月27日17:35 カテゴリ本 政治の起源 経済学は「社会科学の女王」と呼ばれることがある。これは見かけを数学で飾って科学的に見えるだけでなく、経済的な土台が上部構造を規定するというマルクスの図式がいまだに多くの社会科学者に受け入れられているからだろう。その元祖は「市民社会が国家を生み出す」というヘーゲル法哲学だが、最近はこのヘーゲル=マルクス以来の図式を疑う議論が多い。 本書はこうした問題意識を明示し、政治学を中心にして社会科学を再構成しようという野心的な試みだ。著者の出世作『歴史の終わり』は、冷戦の終了とともに西洋的な自由経済と民主主義が究極的な勝利を収めて歴史が終わる、という露骨な自民族中心主義だったが、本書はその逆に中国をベンチマークにして国家の歴史をたどっている。 著者によれば史上最初のmodern stateは、紀元前3世紀の秦である。550年に及ぶ春秋戦国時代の