柄 闇市の帰りにいつの間にか帰り道がわからなくなってしまったすずは、遊郭の中に迷い込み、そこで初めてリンに出会う。初対面の二人は、原作のマンガ版で、ちょっと気になる会話を交わす。 リン「あんたもよそから来んさったんじゃろ 広島?」 すず「ほうですけど 何で!?」 リン「うちも広島に居ったんよ そんとな柄の入った着物を持っとったけえ なんとのうね」 リンは、古いよそいきをアッパッパに直したすずの服を指でさして「広島で流行った柄なんじゃろか」と不思議がる。 (『この世界の片隅に』中巻22ページ ) 初めて読んだときは、さして不思議にも思わず読み過ごした会話だが、読み終えてから改めて『大潮の頃』を見直していて、ようやくあっと気がついた。 すずのアッパッパは、すずが子供の頃、草津のおばあちゃんが仕立ててくれた着物なのだ。そして、着物の布は少し余ったらしく、おばあちゃんの道具箱に収められている。 (