我ながら未熟な味覚だと思う。 好きな食べ物はカレーに唐揚げ、ハンバーグなど。子どもの頃から食べ慣れたメニューをローテーションするだけの食生活で、栄養の偏りに不安はあるものの、いろんなグルメを味わってみたいという欲はまるでわいてこない。 口当たりのいいモノ、どこでも簡単に食べられるモノに慣れすぎてしまい、食が極端に保守的になってしまったのだろうか。 そこに来て「土のスープ」「鶏のとさかの塩焼き」「パイナップル茶漬け」である。カバー見返しの説明文にもあるように、数々の「奇食」を紹介し、〈ヒトの業と知恵の深さを実感〉しようというのが本書だ。 例えば、虫。テレビのゲテモノ料理番組には昆虫食がつきものだが、日本人も古来からトンボやカマキリ、コオロギやゲンゴロウといった虫たちを食していた。本書では「ザザムシの佃煮」や「ハチの子のすし」といったメニューが紹介されている。茶色い幼虫がひとかたまりになったグ