赤い頭巾 以前、『グリム童話』にちなんだドイツの各地を巡るというテレビの番組を見ていると、「赤ずきんちゃんは、本当はこんな衣装だったんですよ」と、ドイツの民族衣装を着た少女を映して紹介していたことがあった。頭に赤いモノをつけているのは確かだが、一般的な「赤ずきん」の挿絵で見るような赤いフードではなく、頭頂部に赤いリボンを円筒状に巻いたような小さな飾りなのである。 この番組は「赤ずきんちゃん」を完全にドイツのグリム兄弟の創作とみなし、ドイツの話なのだから赤ずきんは当然ドイツの民族衣装を着ているはずだ、と考えたのだろう。 けれども、実際にはフランスのペローの手による「赤ずきんちゃん」の方が、グリム版より百年以上前に発表されている。それでも、かつてはグリム版の方がより民話の原型を残していると考えられ、ペロー版より重視される傾向にあった。……つまり、グリム版がペロー版と一見同じ話を描いているように