『日本のムスリム社会』 桜井啓子 日本のイスラーム関係研究者でも、日本におけるムスリムの実態について知悉している方というのは、ほとんどいらっしゃらないのではないでしょうか。「日本のムスリム社会」というポイントはかなり鋭いところに目の付けています。おそらく本国のイスラーム史研究やムスリム社会研究以上に困難で、かつ評価されにくそうな仕事に心血を注がれている著者に、まず敬意を表したいです。 日本のムスリムと言っても、宗派的な相違もあれば、国籍的には様々です。主たる出身国にはパキスタン、バングラデシュ、インドネシア、イランがありますが、このうちイラン出身のムスリムだけちょっと毛色が違う、というのが新鮮な発見でした。 シーア派とスンニ派という違いもありますが、そもそもイランは戦争による疲弊があったにせよ、基本的には豊かな産油国です。そこからやむを得ず出稼ぎに来ていた方たちは、教育水準も高めで、帰国し