犬はどこだ (ミステリ・フロンティア) 作者:米澤 穂信東京創元社Amazon (注意:ストーリーには触れてませんが、わずかにネタバレ気味です。先入観なしに読みたい方は以下を見ないほうがいいかもしれません) 安眠練炭さんが本年度このミスベスト10入りを確信する作品*1。いろいろあってやっと今日読み終わった。 ハードボイルド(というか、正確に言えば失踪人捜索小説)のフォーマットに極めて忠実な作品である。どういうことかと言えば、作の半ばまでは退屈な捜索話が続くが、手がかりの連鎖によってじわじわとサスペンスが高まっていき、やがて探偵役に(必ずしも論理的でない)閃きが訪れる。そしてわずかなタメの後で語られる、心臓を鷲づかみにされるような真相。本格にありがちなくだくだしい推理の検証など一切無く、潔く閉じられる幕。つまり、よくできた失踪人捜索小説の面白さは、語り口のうまい怪談のそれに似通っている。ハー