わたしの歴史好きの上司は「切腹課長」とみんなから呼ばれ親しまれていた。 なにか失敗をした時はいつも、 「お前、これ江戸時代なら切腹もんだぞ~」と笑顔で言いながら、 かならずフォローしてくれるいい人だ。 先日も、古くから付き合いのあるお得意様へ納品ミスをしてしまった時に、 「これは俺も切腹だな~」と言って、 一緒に客先に向かい、全力で謝ってくれた。 なのでわたしは切腹課長には頭があがらない。 そんなある日、課長が病気で会社を休んだ。 急性虫垂炎とのことだった。 盲腸だと軽く見ていたら、開腹手術してから腹膜炎を併発し、 数日後にあっさりと切腹課長は死んでしまった。 文字通り切腹して死んでしまったのである。