1980年代に書かれた初期短編「召されし街」以来、牧野修は一貫して〝世界と意識の変容〟を描いてきた作家だ。『月世界小説』以来、約5年ぶりとなる新刊『万博聖戦』(ハヤカワ文庫JA)は、そんな牧野ワールドの集大成ともいえる作品。あの大阪万博は子どもと大人の戦場だった、という独創的なアイデアを核にすえたSF巨編である。 大阪万博開催を目前に控えた1969年、中学一年生の森贄人(=シト)と親友の御厨悟(=サドル)は、自分たちを取りまく空気が少しずつ変化していることに気がついた。街から何人もの子どもが姿を消し、治安を守るために自警団が結成される。カリスマ教育評論家に率いられたコドモノヒ協会が影響力を強め、子どもたちの言動に目を光らせる。サドルがいち早く指摘したとおり、「オトナ人間」による侵略が進行しているらしい。 危険を感じた一部の子どもたちは、体をぐるぐる回転させることで身につく特殊能力を駆使し、