――第15回日本ファンタジーノベル大賞・「小説新潮」選評より抄録 あの酒見賢一氏の『後宮小説』から始まり、いよいよ第15回を迎えた日本ファンタジーノベル大賞。自由闊達な作風が特徴の本賞は、これまでにも現選考委員である鈴木光司氏など多くの才能を輩出してきた。第13回優秀賞を『しゃばけ』で受賞した畠中恵氏もその続編『ぬしさまへ』とともに注目されている。そして今回、いつにもましてユニークで楽しめる二作品が選ばれている。 大賞を受賞したのは森見登美彦氏の『太陽の塔』。作者は京都大学大学院に在籍する現役京大生で最年少の大賞受賞者だ。また、優秀賞は、渡辺球氏の『象の棲む街』に決定した。 では、小説新潮9月号に掲載された選考委員の選評を抜粋、再録し、各作品を紹介していこう。まずは『太陽の塔』をストーリー紹介も含めて、井上ひさし氏の選評から。 「美点満載の、文句なしの快作だった。なによりも文章が常に二重構