「坊っちゃん」に見る明治の中学校あれこれ: 国民的名作を教育史から読み直す 作者:藤原重彦 Amazon 宿直は大切な仕事 学校には宿直があって、職員が代る代るこれをつとめる。但し狸(たぬき)と赤シャツは例外である。何でこの両人が当然の義務を免(まぬ)かれるのかと聞いて見たら、奏任(そうにん)待遇だからという。面白くもない。月給は沢山(たくさん)とる、時間は少ない、それで宿直を逃がれるなんて不公平があるものか。勝手な規則をこしらえて、それが当たり前だというような顔をしている。よくまああんなに図迂ゝ(ずうずう)しく出来るものだ。これについては大分不平であるが、山嵐の説によると、いくら一人で不平を並べたって通るものじゃないそうだ。一人だって二人だって正しい事なら通りそうなものだ。山嵐は might is right という英語を引いて説諭を加えたが、何だか要領を得ないから、聞き返して見たら強者