車のチラシ見てたの。 赤も綺麗ねぇ。白はあんたに似合うわよ。 白いのに乗ってドライブ行こうか。 五十を超えてから教習所に通いだし、結局仮免も取れなかったおかんが呟く。 また、病気が出たのか? 悲しい気分になりながらも明るく、チラシ見ながらそんな想像してたの?と聞いてみる。 そうなのよ、と答えが返ってきたあと、しばらく沈黙が続いた。 あんたもしっかり生き。 突然の言葉にビックリした。 どうしたの、突然急に? 今日は哲学の日なのよ。 電話を切った後も、おかんの言葉を頭の中で繰り返す。 なんでそんなこと言うの? 今まで感じたことのない胸の感触とともに、 小さくなきそうな声が漏れた。