少子高齢化で先進国はどこも、社会のかじ取りに頭を痛める。そんな中、「国家成立前の伝統的社会に学ぼう」と大胆に提言するのが、学際的な文明論で知られる米国の研究者ジャレド・ダイアモンドだ。2月に邦訳が出た新著『昨日までの世界』(日本経済新聞出版社)では、子育てや高齢者対策など身近な問題について、現代に生かせる伝統的社会の知恵を探る。 文明化が進歩の結果ならば、伝統的社会の習慣を採り入れることに、どんな意味があるのだろう。 ダイアモンドは言う。「テクノロジーは確かに進歩したが、現代文明のすべての面が昔より優れているわけではない。今と昔に共通する問題を考えるならば、伝統的社会から学べることは多いはずだ」 糸口に、九つの分野を示した。たとえば高齢者対策については、労働礼賛や自助を尊ぶアメリカ的価値観が高齢者を社会の隅に追いやっていると批判。高齢者を生き字引として大切に遇する伝統的社会を挙げつつ、「一
漂流老人ホームレス社会 [著]森川すいめい 新宿西口にずらりと並ぶ段ボールハウスが話題になった時期があった。都内の大きな公園に、ブルーシートをテントのように使って暮らす人々がいた。公園から排除された後は、河川敷などで暮らしている人を見かける。なかには互いに助け合い、電化製品も使いこなして自由な生活をしている人もいるらしい。しかし、本書でとりあげられているのは、孤立し、もっとも弱い立場にいる人々だ。認知症、アルコール依存症、知的障がい、統合失調症……。自分の状態が把握できなくなっている人々に声をかけ、医療や福祉の現場に結びつけ、どこでどんなふうに暮らしたいかという、人間として当たり前の希望を口にできるように辛抱強く促していく。本書は、池袋でそのような活動をしているNPOの代表者が、活動の実態と、あるべき支援の形を伝えるために記したものだ。 統計上は、ホームレスの数は減っているのだという。しか
ブレイディー氏は今も、フィッシャーが頭角を現したマーシャル・チェスクラブに所属する。壁には、盤に向かうフィッシャーの写真が残る=ニューヨーク、中井大助撮影 米国出身のチェス元世界王者、ボビー・フィッシャーが64歳で亡くなって5年。絶対的な強さを誇りながら、忽然(こつぜん)と姿を消した人生は今も世界の関心を集める。その人物像に迫ろうと、少年時代から見続けてきたフランク・ブレイディー氏(78)が膨大な資料を使って伝記を書き上げ、新たな光をあてた。和訳『完全なるチェス 天才ボビー・フィッシャーの生涯』(文芸春秋)が出版されたのを機に、ブレイディー氏に話を聞いた。 2人が初めて会ったのは約60年前、チェス大会の会場。以来、活躍を間近で見守った。1965年にはフィッシャーの初めての半生記を出版。72年に世界制覇し、30年続いたソ連の覇権に終止符を打つと全面改訂もした。一方、半生記出版のころから関係は
藤原書店から刊行されてきた「石牟礼道子全集・不知火」の本巻全17巻が第16巻『新作能・狂言・歌謡ほか』で9年がかりで完結した。6825~8925円。表紙デザインは志村ふくみ。自伝、年譜、著作リストをおさめた別巻が来年初めまでに刊行予定。
フリーダム [著]ジョナサン・フランゼン 小説は何のために読まれるのか? 娯楽? 暇つぶし? 自分が主役の自由な世界をせっせと拡張すべく、スマホの画面の上を滑らせるのに忙しい指先には潰すだけの暇すらないのだから、現代のアメリカの地方都市に暮らす一家を描く800ページ近いこんな分厚い本は読んでられない? ウォルター・バーグランドはミネソタの田舎町出身。家が貧しかったため苦学を重ね、大学時代に出会い結婚した妻を愛する良き夫だ。アウトローのミュージシャンの親友を持つ一方で、生真面目で堅物な彼は、世の中をよりリベラルで公正な社会に変えたいというやや青臭い理想に忠実に自然保護協会で働いている。妻パティは対照的に、ニューヨーク州のリベラルなインテリの富裕家庭出身。バスケット部で活躍し、虚言癖の友人につきまとわれて困ったことはあるが、経済的な苦労は知らない。結婚後は家庭に入り、男女二人の子供を育てる専業
「中心と周縁」「トリックスター(いたずら者)」などの文化理論で、1970年代から日本の思想に大きな影響を与えた文化人類学者で文化功労者の山口昌男(やまぐち・まさお)さんが、10日午前2時24分、肺炎のため東京都内の病院で死去した。81歳だった。通夜は15日午後6時、葬儀は16日午前11時から東京都府中市浅間町1の3の府中の森市民聖苑で。喪主は妻ふさ子さん。 北海道生まれ。東京大国史学科卒。東京都立大(現・首都大学東京)大学院で文化人類学を学び、アフリカで神話や王権の聞き取り調査を重ねた。東京外国語大教授や札幌大学長などを歴任。日本民族学会(現・日本文化人類学会)会長を務め、海外の大学でも教えるなど、国際的に活躍した。 専門分野を自由に横断する学風は、80年代の浅田彰さんや中沢新一さんらによる「ニューアカデミズム」にも大きな影響を与えた。著書は大佛次郎賞を受けた「『敗者』の精神史」のほか「ア
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