人間をむさぼり食う巨人との絶望的な戦いを描いたマンガ「進撃の巨人」が、単行本4巻で計450万部を超えるベストセラーになっている。連載デビュー作にして脚光を浴びる、作者の諫山創(いさやま・はじめ)に聞いた。 ■現代の閉塞感 重ねる 舞台は、巨人の大群によって人類のほとんどが食い尽くされた世界。生き残った人間たちは、高さ50メートルの壁に囲まれた城塞(じょうさい)都市を築き引きこもる。平穏は約100年間続いたが、壁を打ち破るほどの超大型の巨人が出現。若者らは命がけの戦いに飛び込んでいく。 無表情に、人間をつまんで、ばりばり咀嚼(そしゃく)する巨人が不気味だ。念頭に、東京の繁華街の深夜のネットカフェでバイトをしていた時の記憶があった。「言葉なんか通じない酔っぱらいの客もいた。いちばん身近に接している動物であるはずの人間が、何を考えているか分からないのが怖い」 巨人が襲撃する前、都市には、城塞内の
「紙の本を読みなよ。」。帯にそんなコピーが躍る文庫本が売れている。いずれも発行から時を経たSFやミステリーの名作だが、人気アニメの作中に登場したことで、若い読者の注目を集めている。 早川書房から出ているフィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』、ウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』、ギャビン・ライアル『深夜プラス1』、ジョージ・オーウェル『一九八四年(新訳版)』の4点。 フジテレビなどで3月まで放送されたアニメ「サイコパス」の中で、言及されたり背景に映り込んだりした。アニメは100年後の未来が舞台だが、登場人物の一人は昔ながらの紙の書籍を偏愛。「紙の本を買いなよ」と口にする。 このアニメのファンの一人、紀伊国屋書店新宿本店の書店員平原未来さん(27)が2月、作中で紹介された本に手書きのPOPを付けたところ、売れ行き好調。版元の早川書房が注目し、アニメの登場人物をあし
完全なるチェス 天才ボビー・フィッシャーの生涯 (文春文庫) 著者:フランク・ブレイディー 出版社:文藝春秋 ジャンル:一般 完全なるチェス―天才ボビー・フィッシャーの生涯 [著]フランク・ブレイディー 稀代(きだい)の天才チェスプレイヤー、ボビー・フィッシャーは奇人とも言われがちな人生を送った。ともかく謎が多い。平気で都合何十年も世界から姿をくらました。そして9年前、実は日本にも長く滞在していたことがわかった。成田空港で逮捕されたからである。 本書は空白の多いボビー・フィッシャーの歴史を綿密にたどり、出来る限り内面に迫ろうとした本だ。誰もわかり得なかった履歴をよくもここまで調べ上げてくれたものだと驚かされる。 母親レジーナがホームレスの状態で産み落とした男児、ボビー・フィッシャーは6歳の頃、姉から1ドルのチェス盤を買ってもらい、自分自身と対局を重ねていく。 やがて棋譜の本を手に入れたフィ
フランシス子へ [著]吉本隆明 個人的なことで誠に恐縮だが、私は吉本隆明さんの講義ビデオ収録のため、お宅に通っていたことがある。愛猫「フランシス子」ちゃんも「シロミ」ちゃんも、見たり撫(な)でたり機材に乗られたりした。その猫たちの気配とともに、歌うような語り口の吉本さんが、見事に再生される本である。 猫は自分の「うつし」だそうである。「猫さんと一致した『瞬間的な自分』と一致できない『人類としての自分』」が、別々に出てくることがある。人間には、人類の枠組みでは収まりきらない何かがあって、どこかに猫類の自分がいるのではないか、とも。 ふと、晩年盛んに「自然」と詩の関係を強調されていたことを思い出した。自然への目配りは、定型詩はもとより、四季派以下の口語自由詩の生命線である。戦後現代詩はある意味これを排してきたが、詩人・吉本隆明は特異なまでに自然を歌った。あれらは猫の視点から書かれた作品であった
■天野祐吉(著書はこちらから) 「広告批評」誌で同僚の島森路子がインタビューした相手は、優に200人を超えている。その対象は、鶴見俊輔さんや吉田秀和さんから爆笑問題やラーメンズまで、相手かまわずのように見えるが、選択の基準がなかったわけではない。 それはただ一つ「自分が面白い」と思える人であることだ。急いでつけ加えておくとこの場合の「面白い人」とは「“いま”を正しく語れる人、あるいは“いま”をいきいきと体現している人」のことである。たんに「話題の人」というだけでは彼女は関心を示さない。そんなとき「だって、あの人つまんないもん」と彼女は言ったし、橋本治さんもそのせりふを何度か聞いたと書いている。 その点で、橋本さんは彼女をインタビュアーである前にすぐれた編集者であると言う。そして彼女のインタビュアーとしてのすごさは、ときに自分を消して相手の一人語りのようにしてしまうところだと言っている。自分
昨日までの世界 文明の源流と人類の未来 上 (日経ビジネス人文庫) 著者:ジャレド・ダイアモンド 出版社:日本経済新聞出版社 ジャンル:一般 昨日までの世界(上・下)―文明の源流と人類の未来 [著]ジャレド・ダイアモンド [訳]倉骨彰 朝日新聞が、識者アンケートによるゼロ年代の書物50冊を選んだ際、1位に輝いたのが著者の『銃・病原菌・鉄』だった。その彼が満を持して書いた新刊が本書である。テーマは「昨日までの世界」の叡智(えいち)をいま一度たどり直し、現代の工業化社会に生かすことができないかを模索すること。 「今日の世界」とは、ヨーロッパ化された世界のことである。『銃・病原菌・鉄』ではその理由が問われた。アフリカに起源を持つ人類のうち、ヨーロッパに旅立った一握りの白い人々が今日、政治、経済、文化、あらゆる面で世界を制覇している。白人が生物学的に優れていたからではない。ささいな環境要因の偶発的
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