「いつかあの車で海までドライブしたいな」 大学時代。 彼女と同棲していたアパートの近くの国道沿いに、中古車販売店があって、 その前を二人で通りかかる時にそんな話をよくしていた。 それは一昔ほど前に流行った国産車で、当時はそこそこのグレードの車だったようだが、 僕が大学生のその頃には少し古い、やや野暮ったい車ではあった。 でも僕はむしろそこにたまらなく惹かれていて、その車で彼女と海までドライブをしたいとずっと思っていた。 中古車とはいえ、貧乏学生だった僕に買えるシロモノではなかったのだけど。 僕らの通っていた大学は海より遥か遠く、むしろ山と少しの古墳に囲まれた立地で、 それ故か「彼女と海までドライブ」というものに強い憧憬を覚えていたのかも知れなかった。 僕のそんな願いを聞く度に彼女は 「レンタカーでもいいじゃない」 と困ったように笑っていた。 それはそうなんだけど…あの車だったら一番いいなっ
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