祝 107(429)小池真理子『無伴奏』集英社(集英社文庫)、1994年。 ※ 単行本は1990年に同社より刊行。 版元 → ● 初 小池真理子。「あとがきにかえて」によると、「私はただひたすら、かつての自分を思い出し、かつての自分をモデルとして使いながら、時代をセンチメンタルに料理し、味わってみようと試みた」(283)、それが本書である。「かつての自分」が属した「時代」とは仙台の1960年代後半、学生運動の時節である。本書を手に取ったのは、この時代背景に関心があるからである。 □ よく喋ったし、よく議論をした。まったく時間を忘れるほどに。 今でも私はあのころ、自分が彼らと何を一生懸命喋っていたのか、思い出せずにいる。何だったのだろう。何を言いたかったのだろう。何を訴えたかったのだろう。 ベトナム戦争があり、安保があった。沖縄問題があり、東京からは随時、様々な活動家たちが仙台入りして私たち