新型コロナウイルスによる危機をきっかけに世界は不連続の時代に入りました。あすはきのうの延長線上になく、古代ローマでパクスと呼ばれた平和と秩序の女神のいない世界が広がります。「パクスなき世界」のあすを考えるための視座をどこに置くべきでしょうか。西洋とイスラム世界を対比した作品を執筆し、2006年にノーベル文学賞を受賞したトルコ人作家、オルハン・パムク氏に新型コロナが現代に投げかけた意味を聞きました。【関連記事】成長の女神 どこへ コロナで消えた「平和と秩序」――20世紀初頭の黒死病(ペスト)の流行をテーマにした小説を執筆中と聞きます。「30年ほど前から考えてきたテーマで、4年前から執筆に取りかかった。私の小説の主題は近代と伝統、西洋と東洋で、疫病への向き合い方は西洋と伝統的なイスラム教社会の違いを端的に示すリトマス試験紙になると考えたためだ。運命論を信じるイスラム教徒に隔離を求めるのは一般に