藤堂さんも一人暮らしだった。僕の部屋とはちがいよく片付いていた。天井の照明は意図的に光度が落とされていた。フローリングされた小ぎれいなワンルームだったが、暖房器具は電熱棒が赤く灯るタイプのヒーターしかなく、少し寒かったのを覚えている。モスグリーンのカーテンが窓にかかっていた。パイプでできた黒いシングル・ベッドが左の壁ぎわへ寄せられ、その足もとには本棚が立っていた。思いのほか小説が多い。近代日本文学がよく揃っていた。右側の壁には簡素な書き物机。ポスターの類はない。たしか、十一月の終わりごろのことだ。 座ぶとんを敷き、部屋の真ん中に置かれたロー・テーブルをはさんで向かいあった。藤堂さんのつくった野菜炒めを食べ、ビールを飲んだ。焼き肉も出してくれた。「そういえば八代はまだ未成年だったな」と藤堂さんはいたずらっぽく笑いながら、グラスに缶ビールをついでくれた。 藤堂さんの好きな小説家を尋ねてみた。そ