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ブックマーク / saebou.hatenablog.com (38)

  • 実話をヒントにしたウソのような本当のようなウソの話~『ヒットマン』(配信) - Commentarius Saevus

    リチャード・リンクレイター監督の新作『ヒットマン』を見た。日では劇場公開されるが、アイルランドではNetflix配信である。 www.youtube.com 主人公のゲイリー(グレン・パウエル)はニューオーリンズの大学で心理学と哲学を教える一方、テク系の作業が得意で地元の警察でおとり捜査の後方支援をする副業をしていた。ある時、おとり捜査で殺し屋のふりをする予定だったジャスパー(オースティン・アメリオ)が暴力行為で停職になってしまい、緊急でゲイリーがかわりに殺し屋のフリをしたところ、捜査が大成功してゲイリーはおとり捜査官として活動することになる。次々とおとり捜査を成功させるゲイリーだが、ある日、夫に虐待されているマディソン(アドリア・アルホナ)に出会い、殺し屋のフリをしつつマディソンに惹かれてしまう。 大学教員がおとり捜査の副業なんてするヒマがあるわけないでしょ…と思ったらなんと実話をもと

    実話をヒントにしたウソのような本当のようなウソの話~『ヒットマン』(配信) - Commentarius Saevus
  • サクセスストーリーではない伝記もの~『フェラーリ』(試写) - Commentarius Saevus

    マイケル・マン監督の新作『フェラーリ』を試写で見た。 www.youtube.com フェラーリの創設者であるエンツォ・フェラーリ(アダム・ドライヴァー)の伝記もの…だが、扱っている時期はエンツォが既に中年になってからの1957年の1年間で、かなり短い期間を扱った作品である。息子のディーノが亡くなったばかりのエンツォはラウラ(ペネロペ・クルス)との仲が非常に悪化しており、愛人のリナ(シェイリーン・ウッドリー)との間に生まれたピエロをラウラに隠して可愛がっていた。フェラーリのビジネスも暗礁に乗り上げ、レーシングドライバーの事故死など、なかなかエンツォの人生はうまく進まない。 フェラーリを築き上げた男のお話にしては全然キラキラしたサクセスストーリー感が無い…というか、中年になって何もかもうまくいかない男を襲うトラブルを、一切ユーモアもなく真面目に描いた話である。とくにエンツォがけっこう冷たく

    サクセスストーリーではない伝記もの~『フェラーリ』(試写) - Commentarius Saevus
  • 科学者の見る小さな世界と科学の大きな影響~『オッペンハイマー』(試写、ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    クリストファー・ノーラン監督の新作『オッペンハイマー』を見てきた。 www.youtube.com 物理学者で原爆開発の立役者のひとりであるJ・ロバート・オッペンハイマー(キリアン・マーフィ)の伝記映画だが、全人生はカバーしていない。オッペンハイマーが若手研究者として頭角を現し始めたくらいから始まり、ルイス・ストローズ(ロバート・ダウニー・Jr.)が商務長官就任を却下されるところまでで終わる。この終わりはいったいオッペンハイマーの人生にどういう関係が…と思うかもしれないのだが、実際に見ると極めてきれいに着地している(ここも面白いのだが、あんまりネタバレすると良くないのでこのレビューでは割愛する)。 まず、序盤でけっこういやな気持ちになることを覚悟したほうがいい…というか、オッペンハイマーがロスアラモスにマンハッタン計画のための科学者村を作り、原爆の実験を成功させるまでが、まるでむちゃくちゃ

    科学者の見る小さな世界と科学の大きな影響~『オッペンハイマー』(試写、ネタバレあり) - Commentarius Saevus
  • やさしさに向き合えるようになるまで~『アイアンクロー』(試写、ネタバレ) - Commentarius Saevus

    『アイアンクロー』を試写で見てきた。既に公式サイトに推薦コメントを書いているのだが、とりあえず簡単に感想を書いておこうと思う。 www.youtube.com アメリカのプロレス界で有名な一家であるフォン・エリック一家を追った伝記ものである。父親のフリッツ(ホルト・マッキャラニー)は息子たちに厳しいプロレスの英才教育を行い、ケビン(ザック・エフロン)、デイヴィッド(ハリス・ディキンソン)、ケリー(ジェレミー・アレン・ホワイト)、マイク(スタンリー・シモンズ)は皆プロレス業界にかかわるようになる。ところが兄弟は次々と不幸に見舞われる。 私は試写に行くまでのこの一家の名前を全くきいたことがなく、他の登場人物も一切名前も知らなかったのだが、それでもものすごく面白かった。もともと私はよく知らないスポーツとかビジネス業界を知らない人にもわかるようにわかりやすく描いた映画が好きなのだが(『PLAY!

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  • ポールがイケメンすぎるのが悪いと思うんだ~『デューン 砂の惑星 PART2』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『デューン 砂の惑星 PART2』を見た。当然第一部の続編である。 www.youtube.com 父親を殺されたポール(ティモシー・シャラメ)は砂漠の民フレメンのもとで修業して砂漠の民らしい戦い方を身につけ、ハルコンネン家と戦って次第に支持を広げるようになる。スティルガー(ハビエル・バルデム)をはじめとする一派はポールが予言された救世主だと信じるようになり、ポールの母ジェシカ(レイチェル・ファーガソン)もフレメンの教母となってその予言を人に信じさせようとする。最初は救世主扱いに抗っていたポールだったが、やがてその役目を引き受けるようになり、ポールを愛するチャニ(ゼンデイヤ)はその姿に複雑な感情を抱くようになる。 アクションとか戦闘なども含めて1作目よりもメリハリがあり、宮廷陰謀劇のところも達者な役者陣が活躍していてたるんだところがない。皇女イルーラン(フローレンス・ピュー)が帝国の噂や起

    ポールがイケメンすぎるのが悪いと思うんだ~『デューン 砂の惑星 PART2』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
    synonymous
    synonymous 2024/03/21
    ティモシー・シャラメ、意外と天然クズみたいな感じがあるので、そこを今後押し出していくといいと思った。
  • 一番セックスしない奴が勝つスラッシャー映画~『首』(ネタバレ・下ネタ注意) - Commentarius Saevus

    北野武監督『首』を見てきた。 www.youtube.com 織田信長(加瀬亮)の家臣たちの権力闘争を軸に能寺の変とその後の展開を描いた時代劇である。史実に忠実かどうかはあまり考えず、家臣たちの憎々しく暑苦しい人間関係や策謀を描くことに重点を置いている(このへんちょっとコーエン兄弟の『ミラーズ・クロッシング』に似ていると思った)。暴力描写も最初から最後までけっこうすごいが、笑うところはたくさんある。とくに豊臣秀吉(監督人)、羽柴秀長(大森南朋)、黒田官兵衛(浅野忠信)のやりとりはまるでコントみたいである。 一応時代劇…なのだが、なんか一番セックスしない奴が生き残るスラッシャーホラー映画みたいな作品である。スラッシャームービー(slashじゃなくてslasherのほう。まあこの映画はslashでもあるのだが)といえばセックスにふけるティーンエイジャーが殺され、性的に純潔なファイナルガール

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  • 優しいが易しくはない映画~『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』 - Commentarius Saevus

    金子由里奈監督『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』を見てきた。同名の原作の映画化である(かなり前だが小説も読んだことがある)。 www.youtube.com 恋愛をしたい気持ちがない七森(細田佳央太)は立命館大学(と思われる)に入学し、ぬいぐるみサークルに入る。ぬいぐるみサークルはぬいぐるみを作るサークルと名乗っていたが、実はぬいぐるみに話しかける人たちのサークルだった。七森はぬいぐるみサークルで活動しつつ、同じサークルメンバーの白城(新谷ゆづみ)と付き合ってみようとするが… アセクシュアル・アロマンティックで伝統的なジェンダーロールにも馴染めない七森を中心に、ぬいぐるみとの話を通して見えてくる傷つきやすい若者たちを描いた作品である。七森は他の人たちが恋愛をしているのを見て、自分も恋愛をしたほうがいいのでは…と思い、ぬいぐるみサークルの中ではずいぶんと社交的な白城と付き合ってみるのだが、

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  • アニメ版『ベルベット・ゴールドマイン』~『犬王』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    湯浅政明監督『犬王』を見てきた。古川日出男の小説『平家物語 犬王の巻』のアニメ映画化である。脚は野木亜紀子、キャラクター原案を松大洋、音楽を大友良英がつとめている。 www.youtube.com 南北朝の時代が舞台で、異形の者として生まれたが猿楽の芸を極めると身体の異形の箇所がひとつずつ減っていく犬王(アヴちゃん)と、壇ノ浦の海人の息子で平家が残した三種の神器の剣引き上げにかかわったせいで盲目になり、琵琶法師を目指すことになった友魚(森山未來)の数奇な運命を描いた作品である。犬王は新しい猿楽の芸で京都で大人気になり、友魚も友有と改名して犬王のことを語る琵琶の歌で人気を博す。やがて犬王には将軍・足利義満(柄佑)から声がかかる。 原作小説のほうはなんだかんだで猿楽とか琵琶とか日の伝統芸能の話という印象がけっこうあったのだが、映画のほうはグラムロックに寄せていることもあってあまりそうい

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  • オカルト、ぺてん、力~『ナイトメア・アリー』(ネタバレ) - Commentarius Saevus

    ギレルモ・デル・トロ監督の新作『ナイトメア・アリー』を見てきた。 www.youtube.com 1939年、相当なわけありらしいスタン(ブラッドリー・クーパー)が、さまざまなあやしげな見せ物が売りの移動遊園地(カーニバル)に流れ着くところから始まる。いろいろな見せ物の手伝いなどで重宝されるようになり、千里眼ショーをやっているジーナ(トニ・コレット)とピート(デヴィッド・ストラザーン)に気に入られて読心術を身につけるようになる一方、電流ショーをやっているモリー(ルーニー・マーラ)と恋をし、一緒に出ていくことにする。2年後、スタンとモリーは街で読心術ショーで人気を博すようになっていたが、精神科医のリリス・リッター博士(ケイト・ブランシェット)にトリックを見破られそうになり、スタンはジーナやピートからやるなと言われていた霊媒のふりを始めるようになる。 前後編に分けてスタンの人生を追うというもの

    オカルト、ぺてん、力~『ナイトメア・アリー』(ネタバレ) - Commentarius Saevus
  • この構成でいいのか?~『最後の決闘裁判』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    リドリー・スコット『最後の決闘裁判』を見た。 www.youtube.com 中世フランスで実際に起こった決闘裁判を主題に、3章構成でそれぞれの当事者の視点から事の次第を描いた作品である。第1章がジャン・ド・カルージュ(マット・デイモン)、第2章がジャック・ル・グリ(アダム・ドライヴァー)、第3章がマルグリット・ド・カルージュ(ジョディ・カマー)の視点で描かれている。マルグリットが夫ジャンの元親友であるジャックに強姦されたとして訴えを起こし、それをジャンとジャックの決闘で決する、という物語である。史実に基づいているとは言え、かなり脚色はされているらしい。 明らかに#MeTooを意識した作りで、性暴力にあった女性の主体性が置き去りにされ、結局男性同士の見栄の張り合いに回収されてしまう様子を皮肉をこめて描いている。とくに最後の決闘が意図的にかなり見苦しく、ロマンティックな騎士道的雰囲気を完全に

    この構成でいいのか?~『最後の決闘裁判』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
  • あのこは実は貴族じゃない~『あのこは貴族』 - Commentarius Saevus

    『あのこは貴族』を見た。www.youtube.com 東京の松濤で育った榛原華子(門脇麦)と、地方で育って東京に出てきた時岡美紀(水原希子)の暮らしがひょんなところで交錯するさまを描いた作品である。美紀は勉強して慶應義塾大学に合格するが、親の仕事がなくなったため学費が払えず中退し、水商売などで少しずつキャリアアップを目指す。華子は大金持ちの息子である青木幸一郎(高良健吾)と婚約するが、幸一郎は昔、慶應義塾大学で知り合いだった美紀と会っていたことがわかる。 最近の日映画の中では、階級とか地方格差を上のほうまで含めてものすごくちゃんと描いた作品である。貧しいほうを描くということであれば最近もうまくやっていたものはあるし、昔は上のほうの階級をちゃんと描いた作品というのもあったと思うのだが、この映画は現在の日の視点で細かい階級格差と地方格差を丁寧かつリアルに描いている。さらに上の階級の中での

    あのこは実は貴族じゃない~『あのこは貴族』 - Commentarius Saevus
  • 佐藤由美子さんの「日本語版ウィキペディアで「歴史修正主義」が広がる理由と解決策」について - Commentarius Saevus

    ここ数日よく読まれているらしい、佐藤由美子さんの「日語版ウィキペディアで「歴史修正主義」が広がる理由と解決策」というエントリを読みました。こちらは月末の学会で発表するための準備のようなものだということです。 yumikosato.com こちらについて、日語版ウィキペディアに歴史修正主義がはびこっているとか、間違いだらけだということについては私もとくに異論はないのですが(間違いだらけで信用できないということは私もメディアに出るたびに言っているし、できるところは対処してます)、いくつかけっこう大きな事実誤認や、ウィキペディアの手続きに関する理解不足と思われるところがあります。ブログのコメント欄に書いて指摘したのですが、スパムフィルタか何かに引っかかったのか反映されていません。学会で発表するということであればウィキペディアじたいの仕組みについて誤解があるままだとあまり良くないだろうと思うの

    佐藤由美子さんの「日本語版ウィキペディアで「歴史修正主義」が広がる理由と解決策」について - Commentarius Saevus
  • 空虚な中心としてのジョン・デイヴィッド・ワシントンの身体~人種映画としての『TENET テネット』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    クリストファー・ノーラン監督の新作『TENET テネット』を見てきた。既にいろいろなレビューで出ているとおりやたら複雑で、しかもネタバレをしないほうがよさそうな映画なのであまり詳しいことは書かないが(ただしこのレビューは多少ネタバレがある)、とりあえずはジョン・デイヴィッド・ワシントン演じるエージェントが世界を破滅から救うべく活躍する作品である(こう書くとなんか007やミッション:インポッシブルシリーズとどう違うんだという感じだが、まあ話としてはあのへんと大差ない発想で作られている)。 www.youtube.com …で、世間で話題なのは構成の複雑さとかタイムトラベルとかなのだが、私がこの映画で最も気になったのは人種である。というのも、この映画は人物造形がめちゃくちゃいびつで、そのせいでたぶん全く意図せず現代の大作映画における人種の力学がはっきり出てしまったような作品になってしまっている

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  • カラオケの場面がとにかくよくできている~『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』 - Commentarius Saevus

    オリヴィア・ワイルド監督『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』を見てきた。 www.youtube.com 優等生のモリー(ビーニー・フェルドスタイン)とエイミー(ケイトリン・ディーヴァー)は親友同士で、高校卒業を控えていた。ろくに遊ばず、真面目に勉強や課外活動をしていた2人だが、モリーは卒業を目前にして、他の遊びまくっていた同級生たちも好成績で名門大学に進学していることを知る。これにショックを受けたモリーは今までの分を取り戻す勢いで遊ぼうと決め、エイミーを引っ張ってパーティに行こうとするが、いろいろとハチャメチャなトラブルが起こって… 真面目な高校生2人が卒業を目前にパーティではっちゃけようとしてさまざまなトラブルに遭遇する、という点では『スーパーバッド 童貞ウォーズ』(2007)とほぼ基の設定が同じで、さらにキャラクター造形とかもよく似ている。『スーパーバッド』のセス役だっ

    カラオケの場面がとにかくよくできている~『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』 - Commentarius Saevus
  • 「運命の男」とハードボイルドヒロインの誕生~『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』を見た。言わずと知れたルイーザ・メイ・オルコットの有名作の映画化なのだが、まあセンスのない日語タイトルがついている。グレタ・ガーウィグ監督作である。 www.youtube.com お話は『若草物語』に忠実でありつつ、かなり変えている…というか、みんなが疑問に思いがちなジョー(サーシャ・ローナン)の結婚について、メタフィクション的なものすごくひねったオープンなエンディングを用意している。さらに時系列を乱した編集になっており、最初はなんか「え、もうローリーふられた後なの!?」みたいなところから始まってちょっと面らったのだが、だんだん少女時代と現在の似たような体験が併置され、それがジョーの頭の中で物語になっていくプロセスを示すためにこういう構造になっていることがわかってくる。これは脚色としては大変凝ったうまいやり方で、古典の再構成としてはお

    「運命の男」とハードボイルドヒロインの誕生~『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
  • 神が死んだことはわかってる、でも冒涜はする~無神論者のためのポストモダンホラー『ミッドサマー』(ネタバレ) - Commentarius Saevus

    アリ・アスターの新作『ミッドサマー』を見てきた。 www.youtube.com ヒロインであるダニー(フローレンス・ピュー)はもともと精神的な不安を抱えていたが、妹が両親を無理矢理道連れにして自殺して以来、不眠やパニックアタックに悩まされるようになっていた。そんな中、あまり関係良好とはいえない恋人で文化人類学の博士課程院生であるクリスチャン(ジャック・レイナー)が、友人であるペレ(ヴィルヘルム・ブロングレン)の故郷であるスウェーデンのホルガ村に伝統的な夏至祭を見に行くことを知る。ダニーもこの夏至祭体験に参加することにするが、ホルガ村のお祭りにはいろいろ謎があり… 一応お話としては、誠実とはいえない恋人から離れられず、悩んでいる若い女性が、ふさわしくない相手とのお付き合いを捨ててある種の「解放」を得る、というものである。この「解放」過程が宗教に入ること、というのは『アナと雪の女王2』だし、

    神が死んだことはわかってる、でも冒涜はする~無神論者のためのポストモダンホラー『ミッドサマー』(ネタバレ) - Commentarius Saevus
  • マシンの性生活を考える~『ターミネーター:ニュー・フェイト』(ネタバレ注意&この記事には刺激の強い内容が含まれます) - Commentarius Saevus

    こちらの記事は加筆修正して雑誌に投稿するため公開停止しました。

    マシンの性生活を考える~『ターミネーター:ニュー・フェイト』(ネタバレ注意&この記事には刺激の強い内容が含まれます) - Commentarius Saevus
  • 受動的な創られたヴィラン~『ジョーカー』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『ジョーカー』を見てきた。『バットマン』の悪役であるジョーカーがどうやってジョーカーになったのかを描いた作品…というのは建前で、ほとんど別の映画である。 wwws.warnerbros.co.jp ゴッサムシティに住むアーサー(ホアキン・フェニックス)はピエロの仕事をしながら母ペニー(フランセス・コンロイ)の介護をしている。アーサーは突然笑い出してしまうおそらくトゥレット症と思われる症状を抱え、精神的にも不安定でカウンセリングと投薬を受けているが、それでも憧れの仕事であるスタンダップコメディアンを目指して頑張っていた。しかしながらゴッサムシティが荒廃するとともにアーサーの人生はどんどん下り坂になる。ピエロの仕事の最中に悪ガキどもに襲われ、仕事はクビになるし、市当局が福祉を打ち切ったせいでカウンセリングも投薬も受けられなくなる。度重なる不幸のため限界になったアーサーをどんどん狂気が蝕んでいく

    受動的な創られたヴィラン~『ジョーカー』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
    synonymous
    synonymous 2019/10/10
    “テーマとしては『わたしは、ダニエル・ブレイク』とたぶんほとんど同じである。”
  • 何度フラれても、ちゃんと自分で立ってる~『ロケットマン』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『ロケットマン』を見た。言わずと知れたエルトン・ジョンの伝記映画である。 www.youtube.com 脚がリー・ホール、ジェイミー・ベルが出演していて、ミュージカル版『ビリー・エリオット』に音楽を提供したエルトン・ジョンの伝記映画ということで、かなり『ビリー・エリオット』に関連が深い作品だ。話の構造も似ており、芸術家としての才能を持っているがあまり良い環境で育ったとはいえない少年の物語である。とはいえ、伝記というにはかなりファンタジーの要素が入っており、ミュージカルでもあるし(エルトンの代表曲が人生の岐路にあわせて出てくる)、だいぶ脚色があると思われる。 お話は舞台衣装を着たままのエルトン(タロン・エジャトン)が依存症のミーティングにやって来て自分の半生を回想するという枠に入っている。エルトン(名はレジナルド・ドワイト)はあまり仲の良くない両親のもとで育ったが、幼い頃からピアノの才

    何度フラれても、ちゃんと自分で立ってる~『ロケットマン』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
  • 最も応援上映してはいけない映画~『主戦場』 - Commentarius Saevus

    『主戦場』を見てきた。日系アメリカ人であるミキ・デザキが監督をつとめたドキュメンタリー映画で、従軍慰安婦をめぐる論争を扱ったものである。 www.youtube.com 全体的に非常にわかりやすく、テンポのいい編集でエンタテイメントらしく作られたドキュメンタリーである。マイケル・ムーアみたいに監督が出てきて面白おかしく自分の意見を主張したりするというわけではないのだが、編集などがいちいち気が利いており、見ていて飽きない。デザキ監督がこういう映画を撮ろうと思ったのは、日でネット右翼に攻撃されたことがきっかけだそうだ。 基的にはいろいろな人にインタビューしているだけなのだが、否認主義者たちが人たちは冷静に話しているつもり…なんだと思うものの、学問的議論どころか倫理的に問題がある発言を(自分たちはまともな主張だと思って)連発しており、笑うしかないようなところがたくさんあった。サンフランシス

    最も応援上映してはいけない映画~『主戦場』 - Commentarius Saevus