1年前、エジプトの大統領選挙でムハンマド・モルシ氏が当選を果たした時、本誌(エコノミスト誌)は慎重な見方を示した。自由民主制を熱心に支持する者として、我々はモルシ氏の出身母体である「ムスリム同胞団」の信条−−「政治は宗教に従属する」−−を支持しない。同時に我々は、イスラミスト(イスラム教主義者)運動に充満している女性と少数派に対する態度を受け入れることはできない。 本当ならエジプト革命を率いた世俗派が勝利することが望ましかった。それでも我々は、52%という票を得たモルシ氏には大統領となる権利があると考えた(この数字は5カ月後の米国大統領選挙でバラク・オバマ氏が得た支持を上回る)。そして何よりエジプトが30年間の独裁体制に終止符を打ち、民主主義国家への道を歩み始めたことを喜んだ。 だからこそ、ここ数日の出来事には不安を感じている。民衆のデモと兵士の力が相まってモルシ氏を失脚させたという事実は