香山さんは指摘する。「安倍さんは著書『美しい国へ』のなかで、『わたしたち』と『かれら』という言葉を多用している。『わたしたち』は家族を愛し、国を愛し、公共心があり、にこやかで美しい。『かれら』は利己的で姑息(こそく)で悪意に満ちたイメージです。ものすごく違うのに、『わたしたち』や『かれら』のはっきりした定義は書かれていない。2者の線引きはあいまいで情緒的です。まるで漫画のような2項対立でしか世界をとらえていない」(2006.9.13 毎日新聞) 前回述べた「アンチノミー」についてもう一度おさらいしておく。安倍は国民の支持を取り付けなければ、政権が持たないことを知っている。国民から人気がある(少なくとも他人からそう思われている)ことこそが自らの権力源泉であることを知っている。そうでなければ、自分が現在の地位にいなかったであろうことも痛いほど自覚している。 一方で彼の認識のレベルでは、国民=「