博士論文紹介「1525-1534年ミュンスター宗教改革・再洗礼派運動 〜都市社会運動の総体把握の試み〜」 私は昨年度東北大学大学院に博士論文を提出し、博士号をいただいたのですが、この博士論文について、少し紹介させていただきたいと思います。 課題 この論文で私が扱ったのは、論文のタイトル通り、ミュンスターの宗教改革と再洗礼派運動についてです。では、この論文は、他の宗教改革や再洗礼派運動研究とどこが違うのかと言えば、この論文が、運動の全体像を把握しようとしていることになります。 1960年代以降発達した宗教改革研究では、都市共同体に注目が集まりました。共同体の宗教的、さらには世俗的な自治権を拡大することが、都市で宗教改革を進めようとした市民たちの動機だったというのです。この考え方は、後にブリックレによって農村共同体にも拡張されました。 しかし、このような研究には大きな問題がありました。それは、