もう10年以上前のことだが、SAP社の開催するユーザ・コンファレンス「SAPPHIREジャパン」が、横浜のみなとみらいで開催された時、マイケル・ポーター教授の講演を聴きにいったことがある。ご存じと思うが、ポーターは「競争優位戦略」とか「バリューチェーン」の概念提唱で有名な経営学者である。 その講演でポーター教授は、日本企業と韓国企業を、よく似た欠点を持つ、と言って叱った。わが国では昨今、官民を挙げて日本企業と韓国企業との優劣比較がお盛んだが、彼の目には、両者は共通に見えたのだ。 その共通の欠点とは何か。それは「総合」という名前の、切り捨て戦略の無さである--そう、ポーター教授は断じた。これが、両国企業の安定した成長を阻害しているのだ、と。 彼の主張を理解するためには、その前に少し知っておくべき事項がある。彼の学説の依って立つ根拠である。そもそもポーターは、経済学の若き俊英として出発した。彼