日本を代表する写真家・細江英公が、ボディービルで鍛え上げた三島由紀夫をモデルに耽美的な世界を構築した写真集『薔薇刑』。1963年に刊行されると、日本のみならず欧米でも評判となり、ノーベル賞を噂されるMISHIMAの名を一躍世界に知らしめた。 2020年は、作家・三島由紀夫(1925〜70)が衝撃的な死を遂げてから50年という節目の年にあたる。そのため世界各地で関連する企画が催されているが、これまでも三島関係のイベントが開催されるたびにあらためて脚光を浴びる写真集がある。細江英公(1933〜)が1963年に出版した『薔薇刑(ばらけい)』(集英社)である。この写真集には、複雑な技巧を凝らした画面に、ボディビルで鍛え上げた肉体を誇示するように晒(さら)す三島の姿が写り込んでいる。まさに彼の自己イメージの具現化そのものと言ってよいそれらの写真群は、1961年秋から62年春にかけて、東京・馬込の三島