食生活の構造に関する研究−比較文化的研究の枠組みとして−宮 岸 哲 也は じ め に この論文の目的は,食生活の構造の図式を再検討し,食生活を比較文化的に捉えるための,基礎的な枠組みを提示することである。 元来,食生活の研究は家政学の領域であり,その背景には学校教育における家庭科教育があった。そして,その根本的な目的は,過去から受け継いだ日本の良き食文化を伝えるとともに,より良い食生活を創造していくことである。そのための自然科学的,社会科学的,人文科学的アプローチが,従来の食生活の研究であったように思われる。 一方,この論文は,日本人の食生活の向上という目的に,直接向かうものではない。この論文において筆者が関心を向けているのは,人類の営みの一つである食生活とは一体どんなものであり,それを明らかにするには,どのような方法が考えられるのかといったことである。 世界中の食生活は様々な様相を呈し