日本時間3月11日に開催される第96回アカデミー賞授賞式。現在83歳の宮﨑駿監督が昨年公開した『君たちはどう生きるか』は長編アニメ映画賞の最有力候補だが、なぜ海外で評価されたのか。哲学者の谷川嘉浩さんは「本作は複雑なプロットで物語の整合性を失い、謎が過剰に詰め込まれている。しかし、抑圧された少年を主人公とするジュブナイル作品としては、その破綻や謎にこそ一定の魅力がある」という――。 「君たちはどう生きるか」は宮﨑駿監督の自伝的物語なのか アカデミー賞(オスカー)の長編アニメ映画賞ノミネートで話題を呼んだのが、2023年に公開された映画『君たちはどう生きるか』(宮﨑駿監督)だ。難解だとの評判も読んだが、大枠の流れは単純だ。12歳の少年が、異界で不思議な出来事を経験する中で、母の死や自分の孤独を受け入れ、新たな母との関係を再構築するというのが筋書きだ(註1)。 戦争の3年目、主人公・眞人まひと