全米から“最恐の批評家”とも“神の声”とも呼ばれる書評家がいる、いや、いた。 その日系人女性が7月に書評からの引退を発表すると、全米各紙はこのことを大きく取り上げた。 「これでよく眠れると思っている作家もいるだろう」 そう書かれるほど、彼女の批評は全米で最も恐れられ、最も影響力があった──。 あのキャリーも恐れた批評家 ミチコカクタニという名前を知っているだろうか? 38年間にわたり「ニューヨーク・タイムズ」の書評を担当したこの激辛書評家の名は、「セックス・アンド・ザ・シティ」の主人公のキャリー・ブラッドショーもコラムニストが恐れる存在として口にしていた。 日系アメリカ人2世のカクタニの父はイェール大学の数学科の教授を務めた著名な数学博士。カクタニもイェール大学を卒業、「ワシントン・ポスト」、そして「タイム」の記者として活躍したのち、1979年にニューヨーク・タイムズに入社。4年ほどアート