一世を風靡した、あのギャグ漫画「がきデカ」から約40年──。 1990年に「がきデカ」完結編を世に送り出して以降、著者が主に足場としたのが小説の世界だ。本作は5つの短編からなる著者の最新作だが、ギャグ漫画界のレジェンドが、フツーの小説を紡ぐわけがない。 「僕は長い間、ギャグ漫画を描いていたでしょ。いまだに頭の中にギャグの構造物みたいなものがそびえたっているんですよ。もう随分と古びてきて廃虚になりかけている。ほったらかしにしてきましたが、一度、解体して検証し直してみようかと思ったんですね。だからこの短編集は、検証作業の報告書みたいなものですね」 表題作である「王子失踪す」は、8歳の少女・瑠璃が巻き起こす実に奇妙な物語だ。 ある日、瑠璃がパイロットの亜蘭がいなくなったと騒ぎだした。亜蘭は瑠璃の父親である笹山が買ってやった着せ替え人形のひとつで、主力商品ミカちゃんから派生したキャラクターである。