ブックマーク / himaginary.hatenablog.com (131)

  • 道具にして規則に非ず:経済学入門で我々は間違った原理を教えているのか? - himaginary’s diary

    Eastern Economic Journalの最新号でDavid Colanderが表題の小論を書き(原題は「Tools, Not Rules: Are We Teaching the Wrong Principles of Economics in the Introductory Course?」)、マンキューの提唱する経済学の十大原理への修正を提案している(H/T マンキューブログ)。 以下はその修正案*1。 トレードオフ原理 フリーランチというものは無いが、時々サンドイッチを掠めることはできる*2。 (標準版)人々はトレードオフに直面している:あるものを得るためには何かを諦めなくてはならない。意思決定においてはある目標と別の目標を引き換えにすることが要求される。 機会コスト原理 機会コストは、明確および明確でないトレードオフに関する経済学者の費用便益の枠組みに焦点を当てるもので

    道具にして規則に非ず:経済学入門で我々は間違った原理を教えているのか? - himaginary’s diary
  • どの(マクロ)経済学者に耳を傾ける価値があるのか? - himaginary’s diary

    在外ないし最近まで在外だった日経済学者のツイートをここ数日で幾つか目にした際に、以前ブクマ/ツイートしたクルーグマンのエントリ「誰に耳を傾けるべきか(Who To Listen To)」の追記部分を否応無く思い出したので、以下にそれを紹介してみる。 PS: One side note: One thing that’s striking in Portes’s discussion — and something I very much agree with — is the irrelevance of formal credentials. As we’ve debated how to deal with the worst slump since the 1930s, a distressing number of economists have taken to arguin

    どの(マクロ)経済学者に耳を傾ける価値があるのか? - himaginary’s diary
  • p値の価値 - himaginary’s diary

    今月初めに米統計学会がp値の使用に関する6つの原則を公表した。その責任者である同学会Executive DirectorのRonald L. Wassersteinは、Retraction Watchという論文撤回監視ブログ*1のインタビューに応じ、最近の再現性危機問題が今回の声明の背景にあることを説明している(H/T Mostly Economics)。日でもこの6原則は各所で取り上げられており、Naverまとめがその辺りに詳しい。 米統計学会のサイトでは、この6原則を提示した声明文書と共に、同文書のp値の議論に関する21人の統計学者の反応も併せて公開している。そのうちUCバークレー教授のPhilip B. Starkが、表題の小論(原題は「The Value of p-Values」)で、今回の声明の精神は買うが、内容には若干の違和感がある、として以下の点を指摘している。 The i

    p値の価値 - himaginary’s diary
  • 最低賃金を引き上げるべき理由 - himaginary’s diary

    引き続き最低賃金ネタ。Economist's ViewのMark Thomaが、theFiscalTimesで最低賃金引き上げを訴えている。 彼の論旨は概ね以下の通り。 労働市場での賃金決定は、経済学の教科書通りに労働者の限界生産力に等しくなるように決まるわけではなく、労働者と経営者の交渉力によって決まる。 労働者の生産性が上がって製品の付加価値が増えても、追加収入の大部分が経営側に渡ってしまった、というのが近年起きたことであり、それが格差拡大にもつながった。 労働者側の交渉力を引き上げる一つの方法は組合。だが、右派の政治家が制定した法律や、企業が海外もしくは組合の力が弱い州に移転する能力により、組合の力は損なわれている。 労働者側の交渉力を引き上げるもう一つの方法は最低賃金引き上げ。最低賃金労働者は元々交渉力が乏しいが、最低賃金引き上げはその乏しい交渉力の代わりとなる。 最低賃金引き上げ

    最低賃金を引き上げるべき理由 - himaginary’s diary
  • なぜエコノミストの予測はばらつくのか? - himaginary’s diary

    NY連銀ブログでエコノミスト予測の不一致についての分析記事が上がっている。元となった論文はこちら。論文の著者はPhilippe Andrade、Richard K. Crump、Stefano Eusepi、Emanuel Moench(Andradeのみフランス銀行、他はNY連銀)で、ブログ記事を書いたのはそのうちのCrumpとEusepi。 分析ではブルーチップ予測の高位10予測平均と低位10予測平均の差としてエコノミストの予測の不一致度を計測している。 これを見ると、政策金利(FF金利)、インフレ率(CPI上昇率)、経済成長率という三大予測項目について、短期と中長期の不一致度が違うことが分かる。即ち、経済成長率については短期の不一致度は大きいものの、中長期に行くにつれその不一致度は低下する。一方、インフレ率の不一致度は期を通じて概ね平坦である。政策金利については、短期では概ね一致して

    なぜエコノミストの予測はばらつくのか? - himaginary’s diary
  • 経済学者は如何に理論からデータにシフトしたか - himaginary’s diary

    1/11エントリでは、今年の全米経済学会に出席したジャスティン・フォックスがそこで見い出した傾向として、格差問題に関する経済学者の取り組みの変化について書いたブルームバーグ論説を紹介した。表題のブルームバーグ論説(原題は「How Economics Went From Theory to Data」)でフォックスは、彼が全米経済学会で見い出したもう一つ傾向、即ち、理論からデータへの重心の移行について書いている。それによると、昼会での講演者といった栄えある役割はエリック・マスキンやジャン・ティロールやベングト・ホルムストロムといった古参の理論家が担っていたものの、実際の研究発表では実証系が活況だったとの由。 フォックスが引用したテキサス大学のダニエル・ハマーメッシュ*1の2013年のJournal of Economic Literature論文によると、主要誌に掲載された理論系論文の割合

    経済学者は如何に理論からデータにシフトしたか - himaginary’s diary
  • ドイツの経済学者が本当に考えていること - himaginary’s diary

    WirtschaftsWunderというサイトが、今年の4月28日から5月27日に掛けて、ドイツ経済学会(社会政策学会)と共同でドイツ経済学者に対してアンケート調査を実施し、会員のおよそ1/3の1002人から回答を得たという。その集計結果によると、ヴォルフガング・ショイブレ独財務相、イェンス・ヴァイトマン・ドイツ連銀総裁、ハンス=ヴェルナー・シンIFO経済研究所所長、クリストフ・シュミット独経済諮問委員会委員長といった名高い緊縮派ドイツ人のイメージとは裏腹に、大部分は米英の経済学者と同様の見解を示したとのことである。WirtschaftsWunderサイトを率いる経済学者Thomas Frickeが、結果の概要を南ドイツ新聞の記事にまとめたほか、英語版記事をINETサイトに上げている(Mostly Economics経由のMichael BurdaのVoxEU記事経由)。 以下はその記

    ドイツの経済学者が本当に考えていること - himaginary’s diary
  • 株価崩壊が中国経済の破綻を意味しない理由 - himaginary’s diary

    石町日記さんもツイートされているが、スティーブン・ローチが表題のSlate記事で中国経済に対する楽観論を述べている(原題は「Why the Stock Meltdown Doesn’t Spell Doom for China」;H/T Economist's View)。ローチに言わせれば、西側は中国経済を西側経済の色眼鏡で見ているため、過度に悲観的になっているという。実際には中国経済は以下の点で西側経済と大きく異なっているため、悲観的になる必要は無いとの由。 消費はGDPの36%と米国の半分の比率に過ぎないため、逆資産効果は働かず、株式バブルの崩壊の影響は限定的。家計部門が未だ未発達で、米国であったような家計のデット・オーバーハングも無いため、日米で見られたようなバランスシート不況は起きない。 投資がGDPの50%に達するという悪名高い投資バブルも心配には及ばない。理由は2つ: 中国

    株価崩壊が中国経済の破綻を意味しない理由 - himaginary’s diary
  • カモとしての日本企業の後継 - himaginary’s diary

    Chris Arnadeという人が、元ウォール街トレーダーという視点からギリシャ危機についてThe Atlanticに書いている。(H/T Economist's View)。 以下はその冒頭部。 One of the first lessons I was taught on Wall Street was, “Know who the fool is.” That was the gist of it. The more detailed description, yelled at me repeatedly was, “Know who the fucking idiot with the money is and cram as much toxic shit down their throat as they can take. But be nice to them firs

    カモとしての日本企業の後継 - himaginary’s diary
  • 金融の発展し過ぎは経済成長に有害 - himaginary’s diary

    という主旨の論文を紹介したIMFブログ記事(著者はRatna Sahay、Martin Čihák、Papa N’Diaye)で、以下の図が掲げられている。 この図の横軸は独自に開発された「金融発展指数」であるが、興味深いことに、日が米国より金融が発展していることになっている。そしてそのことが、ある程度までは金融の発展は経済成長に有益であるが、行き過ぎると経済成長が低下する、ということを示す証左として使われている。 論文では、指数構築の概念図として以下が示されている。 また、各サブインデックスの構成要素としては、以下の変数が挙げられている。 金融制度[FINANCIAL INSTITUTIONS] 金融市場[FINANCIAL MARKETS] 深度[DEPTH] 1. 民間信用(GDP比%)[Private-sector credit (% of GDP)] 2. 年金資産(GDP比%

    金融の発展し過ぎは経済成長に有害 - himaginary’s diary
  • 自殺の5人に1人は失業関連 - himaginary’s diary

    という記事がEurekalertに上がっている。チューリッヒ大学精神病院のCarlos Nordt、Ingeborg Warnke、Erich Seifritz、Wolfram KawohlによるThe Lancet Psychiatryオンライン版掲載論文「Modelling suicide and unemployment: a longitudinal analysis covering 63 countries, 2000–11」の紹介記事で、概ね以下のようなことが述べられている。 世界では毎年およそ百万人が自殺するが、そのうち何人が失業関連かを見い出すため、2000年から2011年の63ヶ国のデータを、北米と南米、北欧と西欧、南欧と東欧、欧米以外の4つの地域に分けて分析した(中国とインドのデータは入手できなかった)。 各国固有の要因はあるが、4地域すべてで失業と自殺率に強い関連性

    自殺の5人に1人は失業関連 - himaginary’s diary
  • 史上最大の略奪:如何にしてナチスは欧州の金を盗んだか - himaginary’s diary

    「パリスの審判 カリフォルニア・ワインVSフランス・ワイン」の著者 ジョージ・M・テイバーが以下のを上梓し、その内容が表題のKnowledge@Wharton記事で紹介されている(原題は「History’s Biggest Robbery: How the Nazis Stole Europe’s Gold」;H/T Mostly Economics)。 Chasing Gold: The Incredible Story of How the Nazis Stole Europe's Bullion 作者: George M. Taber出版社/メーカー: Pegasus Books発売日: 2014/12/15メディア: ハードカバーこの商品を含むブログ (1件) を見る 以下は記事からの引用。 The centerpiece of Schacht’s economic policy

    史上最大の略奪:如何にしてナチスは欧州の金を盗んだか - himaginary’s diary
  • サンノゼのプログラマーの年収が高い理由 - himaginary’s diary

    についてブルッキングス研究所のJonathan Rothwellが、2013年の求人広告を分析した結果として、以下のように報告している(H/T Mostly Ecoomics)。 Software application developers earn large salaries in the United States, $96,260 a year on average. But in metropolitan San Jose they earn $131,270, the highest in the country. There are many partial explanations for this—local cost of living, differences in education levels, experience, and industry—but non

    サンノゼのプログラマーの年収が高い理由 - himaginary’s diary
  • 様々なマクロ経済学の世迷言に騙されないための素朴なケインズ経済学 - himaginary’s diary

    というエントリをデロングが書いている(原題は「Naive Keynesianism to Keep You from Believing Macroeconomic Idiocy of Various Kinds: A Useful Graph for Jackson Hole Weekend: Thursday Focus for August 21, 2014」)。そこでデロングは、輸出、企業の設備・ソフトウエア投資、政府購買、住宅建設という四大需要項目を、潜在GDPにおける比率の直近の景気循環のピークからの乖離として描画した以下の図を示している。 この図からデロングは以下の9つの教訓を引き出している*1 雇用が低迷し賃金が伸びないのは、米国の企業や労働者の世界市場での競争力が低いためだ、という議論は、輸出のシェアの伸びと矛盾する。 雇用が低迷し賃金が伸びないのは、米国企業が「不確実性

    様々なマクロ経済学の世迷言に騙されないための素朴なケインズ経済学 - himaginary’s diary
  • 世界の経済的不平等について知っておくべき10のこと - himaginary’s diary

    をKathleen Geierというシカゴ在住のライターが自ブログで挙げている(H/T Economist's View)。 世界経済の不平等を計測するのは非常に困難 各国が実施する国別の調査はあるが、世界規模の統一的な所得に関する家計調査は存在しない。 国別調査は質や質問や手法が標準化されていない。さらに以下の問題がある: 何が所得かという問題。例: 自作農の所得をどう記録するか 医療保険(ある国では無料の皆保険、ある国では被雇用者の民間給付パッケージ)を所得として扱うかどうか 人々は得てして所得を正確に記憶していない。 所得形態が定期的に支払われる賃金でなければ無理からぬこと 富裕層貧困層も正しい値が得られない傾向がある。 多くの調査では開示所得に上限制約を掛けるため(topcoding*1)、富裕層の所得を過小評価する 異なる国の家計調査をつき合わせる際の通貨換算の問題。 経済的不

    世界の経済的不平等について知っておくべき10のこと - himaginary’s diary
  • 行動ゲーム理論は構築可能か? - himaginary’s diary

    という論文にUDADISIがリンクしている。論文のタイトルは「Can We Build Behavioral Game Theory?」で、著者はGale M. Lucas(南カリフォルニア大学)、Mathew D. McCubbins(同)、Mark B. Turner(ケースウェスタンリザーブ大学)。 以下はその要旨。 The way economists and other social scientists model how people make interdependent decisions is through the theory of games. Psychologists and behavioral economists, however, have established many deviations from the predictions of game

    行動ゲーム理論は構築可能か? - himaginary’s diary
  • 生産性あれこれ - himaginary’s diary

    A Fine Theoremというブログで、シカゴ大学のChad Syversonが生産性について書いたサーベイ論文「What Determines Productivity」を紹介している(H/T EconAcademics.org)。 以下はそのブログエントリの概要。 SICの4桁分類を基に同一産業内の生産性の違いを調べたところ、上位10%と下位10%では平均して生産性に2倍の差があることが分かった(Chad Syverson (2004)[WP])。 Chang-Tai Hsieh and Peter J. Klenow (2009)[WP])は中国とインドではその差がもっと大きいことを見い出した。 この結果は生産性の異なる尺度や、差の評価に関する異なる手法に関して頑健である。 理論上は新規参入が自由に許されていれば低生産性企業は淘汰されるはずである。従って低生産性企業の存続は、新規

    生産性あれこれ - himaginary’s diary
  • 有給休暇を労働者に保障しない唯一の先進国 - himaginary’s diary

    と米国を評した論文をTim Taylorが紹介している(Economist's View経由)。ディーン・ベーカー率いるCEPRの論文で、著者はRebecca Ray、Milla Sanes、John Schmitt。 論文の図1では、OECD各国の制度的に保障された有休休暇・有給休日の状況が以下のようにまとめられている。 日の有給休暇は10日と他国に比べ少なく、有休休日はゼロだが、米国はいずれもゼロである。政府による規定が無いため、米国の23%の労働者には有給休暇が無く、同じく23%の労働者には有休休日が無いという。政府の調査によると、民間部門の平均的な労働者の有給休暇は10日で、有休休日は6日であり、日を除く他のすべての先進国の法的に定められた最低基準を下回っているとの由。また、低賃金労働者(下位1/4)のうち有給休暇を有しているのが49%に過ぎないのに対し、高賃金労働者(上位1/

    有給休暇を労働者に保障しない唯一の先進国 - himaginary’s diary
  • 何がベル研を特別たらしめたのか? - himaginary’s diary

    以前ここで紹介したベル研を題材にしたジョン・ガートナー(Jon Gertner)による以下のを、同研究所に一時期在籍していたというアンドリュー・ゲルマンが書評している(ゲルマンブログ経由)。 The Idea Factory: Bell Labs and the Great Age of American Innovation 作者: Jon Gertner出版社/メーカー: Penguin Press発売日: 2012/03/15メディア: ハードカバー クリック: 59回この商品を含むブログを見る それによると、ベル研の成功の特徴は、その平凡さにあるという。 ベル研には、クロード・シャノンを除けば並外れた天才はいなかった、とゲルマンは断じる*1。確かにウィリアム・ショックレーは特筆に値するし、ジョン・バーディーンはノーベル物理学賞を2回受賞した唯一の人物だが、彼らはフェルミ、ファイン

    何がベル研を特別たらしめたのか? - himaginary’s diary
  • 経済学徒が知っておくべき5つのこと - himaginary’s diary

    についてハーバード公衆衛生大学院(Harvard School of Public Health)のDavid Hemenwayがreal-world economics reviewなる学術誌の直近号に書いている(H/T Mostly Economics)。 以下がその5項目: 人間は孤立した生き物ではなく社会的動物である 嗜好は変更可能で、特に子供と若者においてそうである 世の中には子供と若者が大勢いる(経済学の教科書にはほとんど姿を見せないが) 小売の購入者が自分の買う製品について詳細な情報を持っていることは滅多にない 大企業(やその他の経済的機関)は社会的および政治的な力をかなり持っていることが多い 当初Hemenwayは、機会コスト、限界分析、モラルハザード、外部性、囚人のジレンマゲーム、といったことを挙げようとしたが、結局は経済学に教科書にあまり出てこない上記項目にしたという。

    経済学徒が知っておくべき5つのこと - himaginary’s diary