目次プロローグ 「……お前、喧嘩売ってんのか?」 「売られてるように感じるほど、お前がおかしくなっているだけだ。このゲームはまだ、終わってない」 上等だ、と二人が互いに対して手を伸ばす。 まずい。 そう思いながらも、僕には固まって見ることしかできなかった、その瞬間だった。 「──そこまで」 見たことのない険しい顔をして、ディレクターの篠森さんが立っていた。 「座って」 いつもよりトーンの重い声に、二人は一度だけ顔を見合わせ、そっぽを向いて自分の座っていた椅子に戻る。 しばらくの沈黙があってから、篠森さんは静かに口を開いた。 「……もう、よそうか」 先触れとして空から落ちた雨の一雫のように、その言葉はぽつりと会議室に響いた。 「経験のあるメンバーなら、広告を打たず、新規流入もなく、ただ努力だけで一気にソーシャルゲームで売上を立てるということが、どれだけ無謀なことかは承知していると思う」 「篠