岩井志麻子さん=種子貴之撮影 岩井志麻子(いわい・しまこ)作家 1964年岡山県生まれ。99年、短編「ぼっけえ、きょうてえ」で第6回日本ホラー小説大賞を受賞。同作を含む作品集『ぼっけえ、きょうてえ』で第13回山本周五郎賞を受賞。ホラーや怪談を中心に多くの作品を発表している。主な著作に『岡山女』『合意情死』『楽園』『でえれえ、やっちもねえ』『煉獄蝶々』「現代百物語」シリーズなど。 ぎりぎり手が届くくらいの過去 ――『おんびんたれの禍夢』は、デビュー作『ぼっけえ、きょうてえ』以来、岩井さんが得意としてきた明治もののホラーです。 結局、明治が一番書きやすいんですよね。わたしらが子供の頃は、明治生まれの年寄りがまだ生きていて、腰を90度くらい曲げて近所を歩いていました。だから昔ではあるけれどそこまで大昔でもない。ぎりぎり手が届くくらいの過去という感覚があるんです。それが今の若い人たちは、昭和レトロ